25年前に町民が選択した「埋め立て処分場の延命」 資源リサイクル率日本一の鹿児島県大崎町が直面するリアルな課題
企業との連携で町の課題に取り組む
日本で有名なリサイクルの町といえば、大崎町以外では徳島県の上勝町です。 同町は、「ゼロ・ウェイストタウン」を目指し、ごみそのものが出ないよう、無駄や浪費を減らすことにも力を入れることで循環型社会に向かっています。 一方、大崎町はリサイクル率日本一であるものの、一人当たりのごみの量は横ばいで、ごみの量そのものは減っていないといいます。そこで、大崎町SDGs推進協議会は現在、資源を再利用することに力を入れ、「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」を目指しています。 これからの「OSAKINIプロジェクト」の課題は、ごみの排出量を減らすことやリサイクル率を上げていくことだけではなく、そもそも、ごみが出にくい、リサイクルしやすい商品開発と、リサイクルできる仕組みづくりだといいます。 「OSAKINIプロジェクト」チームリーダーの井上雄大さんと大崎町の町議会議員であり、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会の広報を勤める藤田香澄さんにお話を伺いました。
井上「現在、各地の企業から視察に来ていただくことに力を入れています。2021年に、トヨタ自動車のチームが大崎町を視察に来られました。 トヨタ自動車の技術力と社会課題とを結びつけることによって、新規事業創出をしていく『社会課題DeepDiveプログラム』で、産業廃棄物処理業者向け事業である『Domatics』を起案し、サービスを実現させています」
分別の現場での人の動きなどを動画解析を行うことで、新設備導入の検討や、効率的な人員の配置の指示を出すなど、現場の効率化や安全性を高める画期的なサービスです。 藤田「ごみの処理として、埋め立てを選択した欧米などでは大規模なソーティング(仕分け)センターが立ち上がり、住民がごみを分別することなく丸ごと民間事業者に委託するのが一般的です。 住民が仕分けをするよりも、ソーティングセンターでの仕分けのほうが精度が高いこともあるのですが、日本では住民が分けることになっています」 「Domatics」などで現場が効率化されることで、将来、土間選別を行う産業廃棄物処理業者の効率や処理能力がアップした結果、住民らの分別の手間を減らすことにもつながるかもしれません。 藤田「2022年に、コカ・コーラがスプライトのペットボトルを緑から透明に変更して話題になりました。これは、環境問題を考えてのこと。色のついたものは水平リサイクルできないからです。 企業も、回収やリサイクルを意識した商品開発が求められています。視察にお越しいただいて、アイデアを生み出していただけたらと思っています」
これまでは多くの視察団が泊まれる施設が大崎町になかったことも課題の一つでしたが、このほどその課題が解消しました。 2024年4月、体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI(サーキュラーヴィレッジホステルグルリ、以下GURURI)」が誕生したことで、研修者が町に滞在し、実際に大崎町の分別を体験することもできるようになったといいます。 【編集部注】記事内の肩書や情報は取材時(2024年5月)のものです 取材・文:MARU 編集:岩辺みどり 写真:工藤朋子 デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)