25年前に町民が選択した「埋め立て処分場の延命」 資源リサイクル率日本一の鹿児島県大崎町が直面するリアルな課題
山野「20年前に見た姿と、ほとんど印象が変わらなかったんです。十分に余裕があると感じました。臭いも気にならず、ごみを荒らすカラスなどもいない。これが、20年間の我々が得た成果だと感じました。 15回日本一をいただいたということも、もちろん励みになっています」 15回日本一は、取り組みを始めてから25年の間、地域をあげた官民連携の共創によるたまものであるといえます。現在、高齢化や過疎化が進み、新たな課題も見えてきているといいます。
山野「住民の皆さんも、高齢になってきています。認知症によってごみの分別ができなくなる人がいたり、病気や体力の低下などでごみステーションにごみを持っていくのも大変になって、ごみ屋敷化する家も出てきたりしています。 自治体で分別やごみ出しのお手伝いなども行っていますが、マンパワー不足は否めません」 課題はそれだけではありません。 山野「自治会などの組織に入らない選択をする人たちなども増えているのも実情です。また、自治会内でのごみステーションを使う方の多様な考え方を尊重していかなければ、これまでの取り組みを継続するのが難しいと感じます」 大崎町では、現在、日本の多くの地方自治体がそうであるように、高齢化や過疎化、地域のコミュニティの希薄化による課題を抱えています。 大崎町が現在抱えているこの課題は、焼却施設を維持するにしろ、リサイクル化を進めるにしろ、日本が直面している課題なのではないでしょうか。 さまざまな課題を抱えながらも、大崎町では、2024年4月からリサイクル資源として使用済み紙おむつの回収をスタートさせ、新たな挑戦を続けています。
世界に先駆けて課題解決に向かう
大崎町SDGs推進協議会事務局長の救仁郷(くにごう)諭さんは、同協議会の代表理事が大崎町の副町長であることや、地元の大手企業が参画していることによってさまざまな策が講じやすくなっているといいます。
救仁郷「現在、大崎町は、企業版ふるさと納税制度を活用しています。これは、地方公共団体が取り組む地方創生事業などに対して、企業が寄付や人材派遣による支援を行うことにより、税制上の優遇措置が受けられる制度です」 理事企業となっているのは、大崎町役場と公民連携の推進などを行う合作株式会社のほか、株式会社そらのまち、株式会社南⽇本放送、⿅児島相互信⽤⾦庫と、有限会社そおリサイクルセンターなど地域を代表する大手企業なども名を連ねています。 救仁郷「企業と役場、地域住民をつなぐ役割を果たすのが大崎町SDGs推進協議会です。 大崎をサーキュラーヴィレッジにしていくために、大崎町と『世界の未来をお先に』を掛けた『OSAKINI プロジェクト』と銘打って、研究・開発、人材育成、情報発信の3つの柱を中心にした、プロジェクトを展開しています」