未だ見ぬ地平へ飛び込むためのバイク|Specialized S-Works Roubaix SL8
舗装路の峠を経て天空のグラベルへ
目指すコマクサ峠は、標高1973mの車坂峠と1732mの地蔵峠を結ぶ林道上にある。西の車坂峠側が全面グラベルとなっているから、まずはこの車坂峠へと登る。 車坂峠はスムーズな舗装路の登りだが、とにかく登坂距離が長く(11。69km)、平均勾配も8。7%と険しい。最初はFuture Shockをオン・オフさせて登っていたが、勾配がきつくなってからは終始オフで走る。 それにしても、前回の富士スバルラインで乗ったS-Works Aethos()とまでは言わないが、登坂が軽い。パリッと乾いた、それでいて反応性のよい踏み味は、S-Works Aethos同様FACT12Rカーボンが効いている。 安定性・快適性に振ったRoubaixであっても、軽い車重も相まって登りにおけるストレスはない。特に、急勾配区間でケイデンスが落ちてきてからの、上半身を動員してぐっぐっとペダルをひと踏みずつ進んでいく乗り方になると、シートポストのしなりがうまく推進力になってくれると感じる。ギアはもう無いが、登りのリズムは掴めた。 標高2000m近い車坂峠は山頂に近づくにつれ空気も薄くなり苦しめられたが、静かな山頂に至ってからが本番だ。コマクサ峠に向けて、まずはグラベルの下りが始まる。ここでFuture Shockをオンに。 グラベルを下りながら、ハンドルへの衝撃が緩和されるのを実感。快適そのものだが、それに頼って突っ込むと、今度は32Cのスリックタイヤのグリップが効かなくてコースアウトしそうになる。リジットバイクならここまで、という線引がブレーキングのタイミングにあるのだが、なまじ衝撃が少ないから突っ込みすぎてしまう。 楽しくて攻めがちになるが、あえて安全マージンをとったペースでも下ってみると、なるほど安心感が違う。ロードバイクとして走る上では、グラベルの下りをあえて攻める必要はないのだから、これくらい安定感あるのはありがたい。 そして標高2000mに至るコマクサ峠へのグラベルの登りでは、Future ShockとAfterShockの恩恵を存分に感じる。バイク側でトラクションをかけてくれるから、自分は走るラインに集中できる。 天空のグラベルを終えて地蔵峠へのダウンヒルは狭く、そして道がところどころ隆起している。ここでもFuture Shockがいい仕事をしてくれた。荒れた路面の上下の衝撃吸収はいわずもがな、コーナーリングでの横方向の動きにもフロントタイヤが追随してくれる感覚がある。舗装路とはいえ攻めすぎる理由はなにもないが、バイクの懐の広さを覚えた。下りが安全なバイクというのは、ロングライドの安全に直結することは言うまでもないだろう。