日中韓首脳会談: 安保巡る課題が鮮明に
北朝鮮──「日韓」対「中国」の深い溝
それを象徴していたのは、北朝鮮問題だ。北朝鮮は27日未明、「人工衛星」打ち上げを予告し、同日夜には打ち上げを強行した。打ち上げは失敗に終わったものの、3カ国首脳会談にぶつけてきたのは明白だった。 これに対し、首脳会談の席上、岸田首相と尹大統領は打ち上げを「国連安保理決議違反だ」として、そろって非難したにもかかわらず、李強首相は打ち上げ予告にも触れようとせず、「世界の陣営化に反対すべきだ」などの発言に終始したという。 さらに、首脳共同宣言を巡っても、前回(2019年)の宣言では、安保理決議に言及した上で「(3カ国は)朝鮮半島の完全な非核化に責任を担う」と明記していた。それにもかかわらず、今回は中国側が「朝鮮半島の完全な非核化」の文言の使用を強硬に拒んだという。このため、宣言が「それぞれ立場を強調した」という中身のない表現に終わったのは残念だった。 北朝鮮は核・ミサイル開発を強行する一方で、昨年夏以降はロシアとの軍事協力を深めて、ウクライナ侵略に北朝鮮が提供したミサイルや弾薬が使われているという。北朝鮮の脅威と暴走は東アジアを超えて世界に拡大しつつある。北朝鮮に外交的影響力を持つとされる中国が、その力を行使しようとしないならば、「極めて無責任」という非難を免れない。
日中の課題も未解決
岸田首相は個別の日中首相会談にも臨んだが、▽東京電力福島第一原発の処理水放出を巡る日本産水産物の輸入禁止の撤廃、▽日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が無断で設置したブイの即時撤去、▽中国で拘束された日本人の早期解放──などの懸案は、いずれも進展をみなかった。 今回の3カ国首脳会談では、3カ国の「協力プロセス再開」の装いを示したようにみえるが、安全保障における溝を覆い隠すことはできなかった。その背景として、日米韓の連携強化を通した米国の存在感が中国にとって重圧となっている側面を指摘するメディアもある(※3)。日本は次回の3カ国首脳会談で議長国の役を担う。中国は米大統領選などの米国の動きをにらみながら、今後も日米韓の協調にくさびを打つ外交を仕掛けてくると予想される。日米、日韓の連携を維持しつつ、日中の「戦略的互恵関係」をどのように育てていくかが問われている。