難聴やてんかん、PTSDなど…10人に1人はいると言われる“目に見えない障害”
目に見えない障害を抱える人は、どのくらいいる?
米国の障害者は年々増えているけれど、世の中には自分のことを障害者と思っていない、あるいは思いたくない人が大勢いるので、正確な数字は分からない。米国疾病管理予防センターによると、米国人口の推定26%、つまり4人に1人は目に見える障害か目に見えない障害を抱えている。私が人数にこだわるのは、コミュニティが大きければ大きいほど、その声も社会に与える影響も大きくなるから。 障害者コミュニティは米国最大のマイノリティーグループで、誰もが一時的または永久的に入ってもおかしくない唯一のコミュニティ。バーバリンいわく、障害者のコミュニティは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに関する議論の中で人種、ジェンダー、セクシュアリティと横並びになることはないけれど、他のマイノリティーグループと切っても切れない関係にある。「これは、どんな社会的疎外化も障害につながるからです。階級・人種・ジェンダー・セクシュアリティによる差別や医療サービス側の受け入れ拒否は、障害のもとになります。黒人女性が症状を訴えても信じてもらえなかったり、倒れるまで医者に診てもらえなかったりすれば、障害につながりますよね」とバーバリン。「だから障害を他人事と思うのは大きな間違いです」 私の障害は日常生活のあらゆる面に影響を及ぼしている。なのに私は、つい最近まで、その障害を自分のアイデンティティの一部として見ていなかった。でも、それでは私に必要な配慮やサポートが得られない。
目に見えない障害を持つ人は、職場の中でも外でも誤解されがち
「障害者には、国から支給される障害者手当をもらっている人というイメージがあります」と話すのは、米シンクタンクData for Progressの会員で障害者の権利擁護を専門とする弁護士のマシュー・コートランド。「それが理由で多くの人は『働いている以上、自分が障害者であるはずはない』と考えてしまいます。私たちは今日もピューリタンの労働倫理、つまり資本主義のために生み出せるものの量で人の価値を計っています」 働いている人や働ける人であっても、職場や日常生活でバリアに直面し、自分らしくいられないことはある。感覚処理感受性が高い人にはオープンなフロアプランが辛いかもしれないし、偏頭痛持ちの人には蛍光灯が辛いかもしれない。慢性疲労症候群や運動障害の人にとっては毎日の通勤が大仕事。だからコロナ禍で各種イベントがリモートになったとき、障害者の大半は喜んだ。いままで参加できなかったイベントに自宅から参加できるようになったわけだから。私自身もフォームローラーを使いながら会議に出たり、ベッドで横になりながら電話をしたり、体のニーズに応じて休憩を取ったりしていたので、長時間デスクに縛り付けられている感じがなかった。私の場合は、勤務体系がフレキシブルになったことで人としての機能が向上し、パンデミック前より仕事がはかどるようになったので、多くの企業が従業員をオフィスに戻したのは残念なこと。 でも、パンデミックが収束したからというだけで、当時の生活をラクにしてくれた保護を手放す必要はない。「自分が障害者コミュニティの一員として数えられ、平等な保護を受けていることに気付いていない人は大勢います」とコートランド。「このような保護には、職場や教育現場における配慮、公共スペースを使う権利、私たちが“障害”という言葉から連想するような政府のプログラムなどが含まれます」 米国の障害者法は目に見えない障害も保護してくれる。でも、職場や学校で必要なサポートを得るのは大変だし、気分が優れない状態で立ち向かうのは至難の業。コートランドによると、障害者を取り巻くアメリカの法律は本当に分かりにくい。「ひょっとすると、意図的にそうなっているのかもしれません」。Invisible Disabilities Associationなどの団体は、法律の制定を通して目に見えない障害が目に見える社会を作ろうとしている。IDカードや駐車ステッカーも、障害者用のサポートが使いづらい状況を改善し、非顕在性障害に光を当てるきっかけになるかもしれない。