WONKが語る、東京起点のビート・ミュージック・クロニクル、久保田利伸との共鳴
自分が好きな音楽を知ってほしい
―「Skyward」のMELRAWさんのサックスの演奏はケンドリック・ラマーの「FOR FREE?」を彷彿とさせますね。 荒田:まさにそうですね。ずっといっしょにやっているから、安藤さん(MELRAW)には細かい指示をしなくても、雰囲気でいろいろわかってもらえる。なので、ディレクションらしいものはほとんどしていなくて。「Life Like This」ではちょっとセクションっぽい感じは出してもらいましたけど。それ以外は自由に吹いてくださいと。特に「Skyward」の最後は気が狂ったように吹いてくださいとお願いしてああなりましたね。 ―さっきオートチューンの話が出ましたが、「Passione」のオープニングではオートチューンを使っています。 井上:この冒頭は荒田ヴォーカルですね。このアルバムでいちばん最初に作った曲ですね。 荒田:もう2年弱ぐらい前です。 江﨑:アルファ ロメオとのタイアップが決まっていて、ラテンっぽいノリというのも決まっていた。 ―そうですよね。オートチューンのヴォーカルから始まって、途中からホーンのアレンジがラテン風になって意表を突かれる曲だなと。 荒田:ここ数年、一本の歌ではなくて、コーラスワークで表現するヴォーカルの組み方にハマっているのはありますね。それをやりたかったんです。 ―ところで、今回のアルバムは「WONKが編纂した東京起点のビート・ミュージック・クロニクル(年代記)」というコンセプトだそうですが、ビート・ミュージックだけに特化しているというより、楽曲は多彩ですよね。長塚さんのヴォーカルが際立つ曲も目立ちますし。 江﨑:J・ディラ由来のビート・ミュージックをバンドでしっかりやるぞというコンセプトで始まったWONKが、やがて既存のビート・ミュージックだけに囚われない音楽をやり始めたのが2020、21年ぐらいで。前作の『artless』を引き継ぎつつ、ふたたびビート・ミュージックに回帰してきたという意味もありますね。 井上:もともとは『artless 2』として作っていたんですよ。 江崎:今作はふたたび荒田が軸で作っていったので。元々追求していた道に帰ってきましたね。WONKなりにビート・ミュージックの歴史を凝縮したという意味合いもあるんですけど、WONKの成長日誌にもなっている。WONKというバンドのクロニクルでもある。冒頭が歌モノで、だんだん過去の作品のテイストに遡っていく雰囲気がありますし。 荒田:今回のアルバムの基盤には『artless』の作り方がありますね。かつてはMIDIでループを組むだけのところもあったのが、『artless』ではデータの音源を使っても楽器を弾く。人間味があるように演奏されている。そこは意識しましたね。それが好きだと思ったんです。 江﨑:1曲目の「Fragments」とかはクリックを使っていないしね。 ―ちょっと質問の方向性は変わりますが、最近触発された音楽や経験は何かありましたか? 長塚:直近だと、先日NHKホールで観た久保田さんのライブですね。最強でした。セットリストも、「LALALA LOVE SONG」、「Missing」、「LOVE RAIN」といったヒット曲をやるタイミングも、演出もMCも良くて、これぞショーだなと。 江﨑:この前の「LIVE AZUMA2024」でのWONKのライブ(10月20日)の長塚さんのMCが様変わりしていて、久保田さんが完全に憑依していました(笑)。久保田さんのライブが素敵だったのは、MCで何度も「自分もみなさんと同じひとりのミュージック・ラヴァーだ」とおっしゃっていたこと。事実、開演前にDJの人がプレイして、みんな立って踊ってディスコみたいになるんですよ。ミラーボールまで回っているし。しかも、久保田さんのライブ前の最後の曲がブルーノ・マーズの「24K Magic」で。そこでめちゃくちゃ盛り上げてから、自分のライブをやっていた。そういうミュージック・ラヴァーとして盛り上げていこうというマインドがインストールされたMCを長塚さんもしていました(笑)。 井上:自分も、WONKをきっかけにして、僕らが影響を受けた海外の音楽をリスナーの人が聴いてくれたら嬉しいです。そうやっていろんな人に音楽を届けて自分たちが好きな音楽も知ってほしいという気持ちと、自分たちがやりたいように音楽をやっていればいい、というあいだで悩むというのはわりと普遍的なテーマとしてあるじゃないですか。コロナ前ぐらいまではどうすれば広く届けられるかというのを考える時期だったけど、ここ数年は自分たちが表現としてやる音楽に、意識的に教育的な意味を持たせることはないんじゃないか、良い曲をやれば自然と伝わるんじゃないかと思うようになっていて。そのことをより強く思ったのは、昨日NHKの収録でいっしょだったエモーレスさんが歌うイーグルスの「Desperado」の歌を聴いたのが大きいです。 長塚:ストリートで往年のJポップの名曲をはじめいろんな曲をカヴァーして歌って、その映像をインスタにアップしていらっしゃる方です。本当に素晴らしい。 井上:僕らも、方向性さえ間違えなければ、好きな音楽をやりたいようにやれば、伝わる人に伝わる、そう思った。 ―なんでしょう、いまの話を聞いていると、WONKによるカヴァー・アルバムとかあるとすごく面白そうだなと思いました。 荒田:じつは何年も前からそういう話は出るんですよね。でも、まだ早いかなと。いつか作りたいですけど。 井上:おじいちゃんになったらやりたいね(笑)。 <リリース情報> WONK 『Shades of』 配信中 特設サイト: =収録曲= 1. Fragments / WONK 2. Essence / WONK 3. Fleeting Fantasy / WONK,Kiefer 4. Skyward / WONK,BewhY 5. Life Like This / WONK,久保田利伸 6. Here I Am / WONK,Jinmenusagi 7. Passione / WONK 8. Shades / WONK 9. Endless Gray / WONK 10. Voice_03.10.2023 / WONK 11. Miracle Mantra / WONK,Bilal 12. One Voice / WONK,T3,K-Natural,Bilal CD 発売日:2024年11月13日(水) 形態:紙ジャケ見開き仕様 品番:POCS-23055 定価:¥3300(税込) Label:EPISTROPH Distributed by VMG / UNIVERSAL MUSIC LLC; LP 発売日:2024年12月25日(水) 形態:12inch 180g重量盤 2枚組 MADE IN JAPAN 品番:EPST-048 定価:¥5940(税込) 予約:EPISTROPH STORE Distributed by EPISTROPH <ライブ情報> 11月30日(土)オープンフェスティバル2024(秋川) 12月7日(土)Montreux Jazz Festival Japan 2024(横浜) WONK “Shades of” Tour 大阪公演 2024年12月22日(日)Yogibo META VALLEY 東京公演 2025年1月12日(日)Spotify O-EAST 札幌公演 2025年2月1日(土)札幌SPiCE 福岡公演 2025年2月7日(金)BEAT STATION 名古屋公演 2025年2月11日(火・祝)Shangri-La 金沢公演 2025年3月2日(日)GOLD CREEK 仙台公演 2025年3月8日(土)MACANA
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