【ポケスリ】『ポケモンスリープ』ポケモンCOO宇都宮崇人氏&SELECT BUTTONインタビュー。初期イメージやカビゴンのごはん事情など、リリース1年とちょっとを振り返る。今後の展望と開発移管についても言及
2023年7月20日にリリースされたスマートフォン向けアプリ『Pokemon Sleep』 (以下、『ポケモンスリープ』)は、睡眠をエンターテインメント化することで朝起きるのが楽しみになる睡眠ゲームアプリ。 【記事の画像(20枚)を見る】 寝るときにスマートフォンやデバイスを枕元に置いておくと、睡眠を計測。その結果によって目覚めたときにポケモンたちの寝顔が見られる、といった遊びとなっている。 リリースから世界中で大きな話題となり、2024年6月には全世界で累計2000万ダウンロードを達成。定期的にイベントや追加要素などを実装しながら、ユーザーの生活に根付きつつある。 そんな本作のリリースから1年と少しが経ち、先日開発主軸がSELECT BUTTONと株式会社ポケモンの2社から株式会社ポケモンと株式会社ポケモンワークスの2社に徐々に移管していくことが発表された。本インタビューでは開発の核となったSELECT BUTTONの3名と、株式会社ポケモンCOOの宇都宮崇人氏に、本作の誕生から現在にいたるまでの振り返りについて、そして今後の『ポケモンスリープ』がどうなっていくのかを訊く。 宇都宮崇人(うつのみや たかと): 株式会社ポケモン COO 『ポケモンスリープ』総合プロデューサー。企画立ち上げ及び開発チームの構築を行い、開発中も企画会議に参加。『ポケモンGO』でも、企画立ち上げ及び事業責任者を担当した。 中畑虎也(なかはた こうや): 株式会社SELECT BUTTON CEO 『ポケモンスリープ』ディレクター。開発チームのリーダーとして企画、ディレクション、パラメータ設計、ライティングなどを担当。 宮川佳祐(みやがわ けいすけ): 株式会社SELECT BUTTON CTO 『ポケモンスリープ』リードクライアントエンジニア。クライアントエンジニアのリーダーとしてアプリの実装全般及びPokémon GO Plus +との通信に関するプログラム開発を担当。 塚田拓実(つかだ たくみ): 株式会社SELECT BUTTON CCO 『ポケモンスリープ』アートディレクター/UIデザイナー。全ポケモンを含むさまざまなイラストのテイスト調整、UI、フィールド、エフェクト、演出などビジュアルに関する制作・ディレクション業務全般を担当。 『Ingress』から始まった『ポケモンスリープ』開発への道のり ――前回のインタビューでもおうかがいしておりますが、『ポケモンスリープ』をSELECT BUTTONさんが開発することになった経緯について、改めて宇都宮さんからお聞かせいただけますでしょうか。: 宇都宮: SELECT BUTTONの3人との関わりについて語るには、『ポケモンGO』どころか『Ingress』まで遡る必要がありますね。2014年に、ナイアンティックさんが開発・運営する位置情報ゲーム『Ingress』のオフラインイベントが渋谷で行われ、私もご招待いただいて参加したのですが、そこで小川慧(※1)という男に出会いました。彼は当時から位置情報ゲームに対してもの凄い熱量を持っており、その熱量に惹かれて「ぜひうちに来てほしい」と言って株式会社ポケモンに入ってもらいました。 ※1 株式会社ポケモン Pokémon GO推進室 テクニカルディレクター。2015年に面白法人カヤックを退社して株式会社ポケモンへ入社。『ポケモンGO』の立ち上げに携わった。 宇都宮: そんな彼が「おもしろい3人組がいるんです」と言って紹介してくれたのが、SELECT BUTTONの3人でした。たしか2016年の2月ごろだったと思います。 ――SELECT BUTTONの皆さんもカヤック出身なので、つながりがあったんですね。 宇都宮: そこで当時SELECT BUTTONからリリースされていた『生きろ!マンボウ!~3億匹の仲間はみな死んだ』や『ハントクック -狩りからはじまるジビエ料理のレストラン-』をプレイしてみました。ゲーム自体がおもしろかったのもそうなのですが、シンプルな中でも“おもしろさの肝”を理解されていると感じたのです。しかも、それをたった3人で作っているなんて。いったいどういうことなのだと、すごく興味が湧きました。それでこちらから取り組みのお声がけした結果、形になったものが『はねろ!コイキング』です。 ――まさか『Ingress』からここまでつながるとは。『はねろ!コイキング』 もかなり人気でしたね。 宇都宮: じつは現在のダウンロード数は2700万を超えていて、『ポケモンスリープ』よりも多いのです。もちろんリリースからの期間に差があるというのもありますが、それだけ好評だったというのは事実です。社内にも熱心なファンが結構いまして、「ぜひもう1本お願いします」とお願いしたのですが、当時はお断りされてしまいました(笑)。 中畑: ポケモン以外のこともやってみたいという想いもありましたが、いちばんは休みたかったんです(笑)。『はねろ!コイキング』で僕たちのエネルギーを完全に使い果たしてしまったので、ある程度休む期間を作りました。 宇都宮: そういった理由もおうかがいしたので、「また何かすごくおもしろい企画ができたらお声がけします」と言って、プロジェクト終了後いったんお別れすることにしました。 ――そのすごくおもしろい企画というのが……? 宇都宮: 『ポケモンスリープ』です。“睡眠”をテーマにしたゲームを作りたいという考えはあったものの、まだ中身は全然見えていなかった段階でした。 中畑: 最初は、睡眠をテーマにした何かいいアイディアはないか、というご相談だったのですが、考えてみると睡眠とゲームを組み合わせるのはものすごく難しかったのです。ゲームって何かしらプレイヤー側の入力があって初めて反応を返すわけですが、睡眠中は入力ができない。 ――寝ていると、ボタンを押すにも押せないですね。 中畑: ただ、僕たちがそれまでに作ってきたゲームってどれも“放置系ゲーム”だったんですよ。放置中も入力はとくにないわけで、じつは放置と睡眠って親和性が高いんじゃないかと気づきました。そこから睡眠×ポケモンに放置系という要素を加えてアイディアを練っていきました。 企画中によくイメージしていたのは“カブトムシのはちみつトラップ”です。木にはちみつを塗って、「どんなカブトムシがくるかな~?」と期待して眠る。そして朝にベッドから飛び起きて木を見に行く。「朝起きるのが楽しみになる」とはこういうことだろう、と考えていました。 ――“昆虫採集”が原点のポケモンらしいアイディアですよね。宇都宮さんは中畑さんのアイディアを聞いたときの印象はいかがでしたか? 宇都宮: 最初の提案は、いまの『ポケモンスリープ』の仕様とはまたちょっと違ったものなのですが、きっとこのジャンルはSELECT BUTTONと相性がいいというのは強く感じました。石原(※2)も企画書を見て大層気に入った様子で、是が非でもやってほしいと言っていました。 ※2 石原恒和氏。株式会社ポケモン代表取締役社長。 ――結果、いまの成功があるわけですから、相性がいいというのは間違いなかったのですね。現在の『ポケモンスリープ』について、宇都宮さんの立場からはどう見えていますか? 宇都宮: 正直に申し上げますと、睡眠×ポケモンというゲームアプリをローンチできて、運営を続けられていることは奇跡的だなと思っています。『ポケモンGO』のときもそうでしたが、とくに『ポケモンスリープ』に関しては前例がほぼないものですので、リリースする直前までどうなるのか予想がつきませんでした。 中畑: 参考にするものも、ほとんどありませんでしたからね。 ――暗中模索の状態でのリリースだということは、少し意外でした。 宇都宮: もちろん、チーム全員の英知を結集させていままでにないものを作り上げたという自信はありました。全力を出し切ったということは断言できます。それでもユーザーの皆さんからどんな反応が返ってくるかは未知数でした。ですので、社内に向けては「こうした何の根拠もないチャレンジができるということは幸せなこと。それができたことを喜んでほしい」と当時は言っていました。 ――挑戦を続けるポケモンらしいですよね。 宇都宮: ひとえに、いつも遊んでくださっているユーザーさんたちのおかげです。本当に感謝しております。私自身もリリースからずっと続けていまして、海外出張で飛行機に乗るタイミングで計測ができないことがあるのですが、それを含めても多分数日くらいしか休んでないです。それほど、個人的にも思い入れが強いです。 宮川: リリースするまで怖かったというのは僕たちもそうで、プログラマー視点だと睡眠計測が実際のユーザーの環境でうまくいくのかというのは本当に不安でした。テストは開発チームのみんなで何度も繰り返しましたが、世界中のプレイヤーがそれぞれ異なる環境で一斉に行うことを考えると……。 中畑: 布団、マットレス、硬いベッド、ウォーターベッドとか寝具もいろいろありますからね。 宇都宮: 社内に睡眠中まったく体が動かない人がいて、テストでエラー出していましたね(笑)。 宮川: いましたね、体動ゼロの人(笑)。リリースの翌朝はドキドキしていましたが、無事に計測できたという声が多く見られてホッとしたのを覚えています。先日、ポケモンセンターで1周年記念のコラボキャンペーンをやっていたのですが、僕も実際に店舗に行ってユーザーさんがスタッフさんにアプリの画面を見せているのを、横からじっと眺めていました(笑)。実際に皆さんのすがたが見られてすごくうれしかったです。 中畑: 基本的には睡眠がメインのアプリなので、プレイしている様子を街中で見かけることってほとんどないですからね。貴重な機会だったと思います。 宮川: そうなんですよね。お昼ご飯を外に食べに行ったとき、カビゴンにご飯をあげているところを見かけたことは何度かありますが。12時過ぎとかのタイミングだと見かけやすい気がします。 中畑: それはたしかに、このゲームならではの光景かも。 ――前回のインタビューではリリース前でおうかがいできなかったので、そのようなリリース後の反響についてもお聞きしたいです。塚田さんはいかがですか? 塚田: アートチームとしては、「ポケモンの寝顔がすごくかわいい」 と言っていただけることが多くて、それがやっぱりいちばんうれしいですね。あと、初期のころは3Dで制作されていると思ってくれているユーザーさんもいて。本当はすべて2Dで作っているのですが、ちょっと特殊な作りかた(※)をしてこだわっているところなので、そう捉えてもらえるのはうれしかったりします。 ※アニメーションのこだわりについては前回のインタビューを参照 中畑: 反響という点でいうと、リリースから少し経ったころに医者の友人から連絡をもらったことがありまして。精神科の先生なのですが、不眠症に悩んでいる患者さんが『ポケモンスリープ』のおかげで寝られるようになったと。しかもそのまま習慣化できそうだと言っていたよ、と教えてもらったことがありました。まさか自分が作ったゲームで、人の健康や人生の面で役に立てるなんて。いや、そういうことがあるといいなと願ってはいましたが、本当にそういう声が届いたことがすごくうれしくて。このゲームを作ってよかったなって、心から思いましたね。 ――それはすごい! でも『ポケモンスリープ』のおかげで十分な時間、規則正しく寝るようになったという声は本当によく聞きます。 中畑: そういった声がいちばんうれしいですね。 宇都宮: 実際、データを見ても継続率の高さには目を見張るものがあります。ほかのアプリと比べると、かなり特異なデータになっています。 中畑: ただ、ひとつ明確な弱点もありまして。インストールした翌日にアプリを起動する割合はものすごく低いのです。普通はインストール直後からある程度ガッツリ遊べますが、『ポケモンスリープ』はまず寝るところから始まりますからね(笑)。ここのハードルの高さは右に出るものはないと思います。そのぶん、7日以上続けて起動した人の継続率は世界トップクラスだと思っています。ゲームを遊ぶというだけでなく、ヘルスケアの習慣となっていることが数値に表れているものと捉えています。 カビゴンに料理をあげる遊び、なくなる寸前だった! ――いまだから言える開発中の裏話って、何かありますか?: 宇都宮: カビゴンにご飯をあげられる回数が、じつは無制限だったこととかありましたね。カビゴンは1日に400キロ食べるという図鑑説明もあり、そういう仕様だったのですが、「睡眠をテーマにしたアプリとして、昼のうちにやれることはできるだけ少なくした方がいい」と石原が強く言い続けていまして、調整をくり返しました。 中畑: 一時期は料理という機能自体がなくなるかも……みたいな可能性もありましたね。 ――そうだったんですか!?: 中畑: 僕たちとしても睡眠というメインテーマを大事にすべきだということには納得していたので、削るべきかなと考えてもいました。ただやはり毎日飽きずにプレイしてもらうサイクルを形成するにあたって、料理は欠かせないと判断しました。いくつかバージョンを作って、最終的には現在の1日3回という形に落ち着きました。 宇都宮: 結果として正しい判断だったと思いますが、一般的なゲームのバランス調整とは毛色が違うので、バランスを見極めるのは難しかったです。人間の生活の中において、どの程度遊びのシステムを入れると心地いいかを議論するのは貴重な経験でした。 ――伝説のポケモンであるライコウ、エンテイ、スイクン も登場しましたね。伝説のポケモンを初めて登場させるにあたって工夫されたことはありますか? 中畑: 睡眠というテーマをぶらさず、“伝説のポケモンと出会う”という大きなイベントをどう盛り上げるべきか考えました。イベント全体としては、ユーザー全体が目標をひとつにして集まれるようなお祭り感を意識しています。“朝起きることが楽しくなる”というのがこのゲームの肝なので、そのために昼にどんなことができるかというのも考えて設計しました。 また、イベント終了後にも仕掛けがありまして。じつはライコウやエンテイ、スイクンはイベント期間中だけでなく通常時も極稀に出会えるようになっています。それが先日、偶然自分のプレイ環境で起こりまして、朝起きたときに思わず「うわっ!」って声を出して喜んでしまいました(笑)。やっぱり伝説のポケモンとの出会いは特別なもので、毎日寝る楽しみが増えたと自分でも実感できたのはよかったなと思っています。 ――今後、ほかにも伝説のポケモンは登場しますか? 『ポケモンスリープ』に登場するポケモンについて何か言えることがあれば教えてください。: 中畑: 伝説のポケモンについては、まだ詳しくは言えませんが、魅力的な形で登場させられるよう準備を進めています。 今後も、新たに登場するポケモンが魅力的なものになるように力を入れて開発していくのは変わらないのですが、すでに登場済みのポケモンの個性がより際立つような調整も行っていく予定です。また、これまでよりさまざまなタイプのポケモンが活躍できるような、遊びごたえのあるモードの開発も検討しています。 ――楽しみです! 新登場というとフィールドも2ヵ所追加されました。ラピスラズリ湖畔とゴールド旧発電所 のテーマやイメージについて教えてください。 塚田: 新フィールドは既存のフィールドとはまったく異なる新しい場所にきたと思ってもらえるもの、というのを目指しています。既存のフィールドは名前の色がそのままフィールドに反映されているようなイメージでデザインしていましたが、ラピスラズリ湖畔はとくに夜の時間帯に、ゴールド旧発電所は夕方の時間帯に、それぞれ名前に冠した色を感じることができる仕掛けにしています。またゴールド旧発電所は人工物が散乱しているフィールドになっており、これまでのフィールドでは見られなかった雰囲気になっているので、注目していただければと思います。 SELECT BUTTONから開発主軸を“バトンタッチ”。ずっとずっと継続するコンテンツを目指して ――睡眠計測に関して、スマートウォッチへの対応も行われました。今後のさらなる対応や展望について教えてください。: 宇都宮: これに関してはまだ機能が入ったばかりで、ここから普及させていく段階です。そしてそれにはものすごくエネルギーがかかると考えています。ですのでつぎの展開よりも、まずは世の中にしっかり根付かせることに集中したいと思っています。 ――実装は宮川さんがおもに担当されたのでしょうか? 中畑: じつは開発チームのメンバーがいまどんどん増えていまして、今回は宮川とは別のメンバーが担当してくれていました。外部サービス連携は本当に難度の高い開発になりますが、大きなバグもなく仕上げてくれました。チームの拡充には手ごたえがありまして、この1年でかなり成長したと感じているところです。 宮川: メインの担当ではありませんが、進捗や実装の確認はしていました。僕は寝るときに必ずApple Watchを付けていますし、個人的に早く欲しい機能だったので楽しみながらテストしていました(笑)。 宇都宮: Apple Watchで計測をされる方は増加傾向にあります。社内でも結構ユーザーがいるのですが、睡眠計測に使ってしまうと充電する時間がないという声は挙がっていますね。こればかりは私どもですぐ解決できるものではないのですが……。 中畑: デバイスに関しては、その人の生活習慣に合わせたものを使っていただけるのがベストなのだと思っています。たとえばスマホやPokemon GO Plus +での計測は振動を検知していますが、ご家族でいっしょのベッドや布団で寝られる場合は、自分の波形のみを綺麗に計測できないことが多いです。そういう場合はスマートウォッチを選んでいただけると綺麗に計測できると思います。 ――さて、インタビューも終盤ということで『ポケモンスリープ』の今後の展望をお伺いできますでしょうか。 宇都宮: とにかく継続して運営していくことが重要だと考えています。自分自身毎日の習慣となっていますし、同じように続けてくれている方々のためにも長く続けたいです。また、いまのところ発見されているポケモンは全部で1025種類もいますので、みんな登場させようとするとかなり時間がかかりますね。 ――追加している途中できっとまた増えるだろうことも予測できますね(笑)。 宇都宮: そうかもしれないですね(笑)。朝起きるのが楽しみになるというのは、すなわち生活が豊かになることだと思っています。ユーザーの皆さんに毎日小さな幸せが届けられるよう、末永く続けていきたいと考えています。 ――今後の開発について、開発主軸がSELECT BUTTONと株式会社ポケモンの2社から株式会社ポケモンと株式会社ポケモンワークスの2社に徐々に移管していくとのことですが、こちらについて改めてご説明をお願いできますか? 宇都宮: 最初の契約時点で、リリースから一定期間経過後にSELECT BUTTONが開発を離れることになるというのは決まっていました。弊社としてはもっといっしょにやってほしいと思っていますが、理由は最初にお話しした『はねろ!コイキング』のときと同じです。 SELECT BUTTONは同じことをずっとやり続ける人たちではないと思っていますし、また新たな道を進まれると思います。正直な話、ここまで長いあいだ『ポケモンスリープ』に付きっ切りになるとは予想していなかったはずです。リリースまでも、かなり長い道のりとなってしまいました。そういう意味ではむしろ長すぎるほどお力添えいただいたので、私たちはそれに報いられるよう全力で長期継続の体制を整えなければならないと意気込んでいます。本音はやっぱり、寂しいですけどね(笑)。 中畑: 僕たちはいまなお100%の情熱を『ポケモンスリープ』に注ぎ続けています。移管が完了する最後の最後まで、それは変わりません! 宇都宮: 謙遜して100%と言っていますが、本当は150%でがんばってくれていますよ。 中畑: もちろんです(笑)。先ほどもお話ししたように、開発チームの規模はどんどん大きくなってきています。頼りになるメンバーばかりですので、僕たちの抜けた後も心配はしていません。これまでに積み上げてきた考えかたやノウハウをすべて伝えていきますので、そこは安心していただければと思います。 宮川: 開発チームとはまた違いますが、じつは2024年の夏前ごろからUnityさんのプロフェッショナルチーム(※3)に一時的にジョインしてもらって動作改善を進めています。おかげで非常に高いレベルで軽量化や機能改善が行えています。すでに一部はリリース済みで、「ちょっと軽くなったかも」という声もちらほら見られます。今後も少しずつではありますが、より快適にプレイしていただけるように改善を続けていくので、そちらもご期待いただければと思います。 ※3 Unity Studio Productions チーム。プロジェクトの最適化、共同開発など実践的なサービスを提供する。 ――誰よりもUnityに詳しいプロたちのバックアップがあるのは安心感がありますね! それでは最後に、読者の皆さんにおひとりずつメッセージをお願いします。: 宮川: 思い返せば、開発初期はひとりでコードを全部書いていたときもありました。そこからどんどん人が増えていって、いまでは自分で実装するよりもメンバーが実装してくれたものをレビューするほうが多くなっています。そうした体制が出来上がったからこそ、安心して後を任せることができます。ユーザーの皆さんも安心して、これからも毎日たくさん寝てください。引き続き『ポケモンスリープ』をよろしくお願いします。 塚田: 僕もデザイナーがひとりしかいない中で、いかにゼロからビジュアル面でのすべてを作り上げていくか悩んでいました。でも、ポケモンさんが専門のアートチームを作ってくれて、イラストやアニメーションの量産化と、その制作フローづくりの部分をまるっと請け負ってくれました。おかげで僕はそれ以外の制作に集中でき、UIだけでなく演出やイラストを含め、ゲーム全体の雰囲気を担うコアな部分に注力できました。 そしてリリースから1年が経ち、『ポケモンスリープ』がどんなビジュアルで、どういう雰囲気を持ったゲームなのかがチームのみんなにもユーザーさんたちにも浸透したと感じています。そういう意味では、僕の役割はいったん終えたのだろうと思っているので、今後は個で担っていた部分のバトンをチームにつなぎ、ユーザーの皆さんにこれからも安心してプレイいただける体制作りに注力していきますので、今後も『ポケモンスリープ』を楽しんでいただけると嬉しいです。 中畑: 宇都宮さんもおっしゃっていたように、長く継続して使っていただけるように、僕たちプランナーチーム一同も一生懸命考えています。ポケモンの追加、イベント開催、機能改善などさまざまな要素で『ポケモンスリープ』を盛り上げられるように全力を尽くします。どうぞご期待いただき、引き続きプレイしていただけるとうれしいです。 宇都宮: 少人数のチームだからできたこともたくさんあったはずです。もちろん弊社にもチームはありますが、それでもSELECT BUTTONの身軽さゆえの、考えたことをすぐに形にするスピード感がなければここまでたどり着けなかったのではないかと思います。改めて、本当に感謝しています。 また、くり返しになりますが、ユーザーの皆さんにも感謝でいっぱいです。『ポケモンスリープ』は間違いなく皆さんのおかげで成立しています。ただの遊びでは決してない、もっとパーソナルな部分に突っ込んだコンテンツだと認識しています。遊んでもらって当たり前のゲームではありません。それにもかかわらず、このゲームを受け入れてくださって、本当にありがとうございます。これからも、『ポケモンスリープ』をどんどん成長させ、みなさんの生活に根付いていけるよう努力を重ねますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。