就職バブル期の再来か? 今年の就活はホントに楽勝?
2.バブル期の就職活動はどんなものだったのか 今のように「採用広報開始」の取り決めはなかったものの、当時は会社訪問解禁日の取り決めがありました。8月20日が解禁日で、内定開始が10月1日と就職協定で定められていました。しかし、当時も、まずは就職協定に縛られない多くの中堅、中小企業が選考を行い、6月ぐらいからこぞって内定を出し始め、その後、大手企業の選考が始まるといった具合でした。当時は、協定上の会社訪問(説明会)は8月20日からでしたが、その前に選考が進んでいて、8月20日当日は、ほとんど最終意思確認だけという企業もありました。 バブル期の採用活動は、なにかとお金がふんだんに使われていました。企業セミナーは一流ホテルのバンケットルームで、コーヒーサービスがあるのは当たり前。交通費は全額支給どころか、説明会に行くだけで1万円をもらえるケースもありました。リクルーター面談といえば高級レストランが相場です。食品メーカーのセミナーでは、大きな紙袋2袋分のサンプル(実際の商品)をもらって帰ることも。自社製品を配れない業態の企業では会社のロゴの入ったオリジナルのテレホンカード(テレカ)を大量に配布するといった具合でした。かくいう私も、当時の就職活動中の先輩に会えば「使い切れないから」とテレカを何枚ももらえたことを憶えています。(筆者自身はバブル崩壊後の1993年卒ですが、2~3年先輩はバブルの絶頂期に就職活動をしていました) 「面談と称し、豪華な食事をご馳走になり、お土産と一緒に“内定”をもらって帰ってくる」。これがバブル期の象徴的な就活でした。そして8月20日の解禁日前後には、他社の選考に行けないように研修と称して海外旅行(!)に連れて行ったり、リクルーターが毎日のようにボウリング、カラオケ、飲食といった「接待」をしてくれたりしました。すべての企業ではありませんが、実際にあった話ばかりです。また、特に元気があったのは知名度で大手に劣る、準大手や中堅企業で、かなり派手に行っていたようです。 3.楽勝とは言えない今の就活事情 バブル期に就職活動を行った先輩たちは就職活動を心待ちにしており、実際十分に楽しんで、いよいよ1社に決めてリクルートスーツを脱ぐ段になると「楽しすぎて辞めたくない」と名残惜しさをにじませていました。今年の就活生も同様かと言えばそんなことはなく、インタビューで会う学生の大半は、「覚悟していたほど厳しくないが、できれば早く終えたい!」と言います。それは、企業の採用意欲が高まっているとは言え、誰でもよいわけではなく、自社の基準に合う学生でないと内定を出さないという姿勢があるからでしょう。バブル期の就職戦線では、主導権は明らかに学生側にありましたが、現在は企業側にあるようです。就職氷河期の頃の企業姿勢(厳選採用)の名残に加え、スケジュール変更による不透明感からくる不安で消耗し、「早く終えたい!」に繋がっているのだと思います。 内定をめぐる攻防も、大きく異なります。前述のようにバブル期は他社を受けさせないために接待攻めにするという「物理的」な拘束だったのに対し、そんなにお金をかけられない今は就活終了を条件に内定を出すという「心理的」な拘束へと変わっています。