クラシカルな「2本ショック」は絶滅寸前!? やっぱり「モノショック」の方が高性能なの?
モノショック(1本ショック)は、そもそもモトクロスで長いストローク量を確保するために生れましたが、不整地を走らないオンロードレースやロードスポーツ車にも採用されたのはナゼでしょうか? それは小さなギャップは素早くソフトに衝撃を吸収し、大きなギャップの強い衝撃はシッカリと踏ん張れるように、サスペンションの反発力を二次曲線的な特性(プログレッシブ効果)にするために、モノショック&リンク式が適していたからです。この特性はオフロードの走破性だけでなく、オンロードでの路面追従性にも大きく影響し、コーナリング速度や安定性を高めるのに役立ちます。 またショックユニットは、バイクを構成する部品の中では“けっこう重いパーツ”になります。そのため、フレームの後部とスイングアームを繋ぐ2本ショックよりも、車体の重心近くに配置したモノショックの方が、バイクの運動性能に影響する「マスの集中化」にも貢献します。単純に重量で比較しても、モノショックは大きくて太いとはいえ文字通り1本なので、2本ショックよりは軽量になります。 これらのメリットにより、リンク式のモノショックは進化を続けて現代ではスーパースポーツモデルはもちろん、スポーツネイキッドやアドベンチャー、オフロードモデルなどに採用されています。 ちなみに近年のスーパースポーツや高速ツアラー、大排気量アドベンチャーなどが装備する「電子制御サスペンション」のリアサスペンションはすべてモノショックで、2本ショックには存在しません。
“バイクらしさ”からハズせない2本ショック
このように、性能や合理性を考えるとモノショック(1本ショック)の方が圧倒的に優位なことは事実です。とはいえ、サーキットやモトクロスコースでタイムを競うようなスポーツ走行をするならリンク式モノショックが間違いなく有利ですが、公道を走る上では、現代の2本ショックなら性能的にも乗り心地でも何ら問題は無いでしょう。
というワケで、レトロなスタイルのネイキッドやクルーザーなどには、昔ながらの2本ショックを装備している車両が少なからずあります。日本メーカーではホンダが「CB1300SB/SF」を筆頭に、「レブル」シリーズと「CL」シリーズ、「GB350」シリーズが2本ショックで、人気の125ccクラスのリバイバルシリーズ(スーパーカブC125、CT125・ハンターカブ、ダックス125、モンキー125)やスーパーカブ系も2本ショックです。 また、カワサキは「メグロK3」とベースとなる「W800」、そして「エリミネーター」が2本ショックですが、スズキとヤマハはモノショックのみになります(※2024年9月18日現在の国内販売モデル。スクーターや競技モデルを除く) こう見ると“2本ショックのバイクもそこそこある”ような気もしますが、車体を共有する兄弟車なども多く、実際には、やはり少数派と言えます。 海外メーカーを見ると、ドゥカティ、BMW Motorrad、KTM、MVアグスタ、アプリリアの現行モデルはモノショックのみになります。しかしトライアンフやモト・グッツィがラインナップするネオクラシック系は2本ショックで、インドのロイヤルエンフィールドは多くのモデルが2本ショックです。 ここからも見て取れるように、性能と合理性を優先するとモノショックがマストですが、スタイルを重視するバイクに2本ショックはハズせない存在……なのかもしれません。
伊藤康司