イッセイミヤケ最後の遺産「塩の香り」は、どのようにして誕生したのか
完成した「塩の香り」
2007年に三宅一生、佐藤卓、深澤直人によって創設され、プリツカー賞受賞者の安藤忠雄が設計した美術館「21_21 Design Sight」のエントランスを、お披露目されたばかりの塩の香りが、断続的に放たれる白い雲とともに満たしている──新たなメンズフレグランスの到来を祝うインスタレーション「Issey Miyake Le Sel D’Issey: Imagination of Salt」だ。 吉岡がリサイクルガラスを20%用いて創造したミニマリスティックなボトルは 、95%の天然由来成分を要件とするヴィーガン認証を受けており、家具業界から再利用されたシダーエッセンスや、フランス産のビートルートが原料の100%天然由来濃縮アルコールを含んでいる。パッケージはアップサイクルされたシーウィード10%で作られ、そのざらざらとした質感は、塩の結晶の手触りを連想させる。吉岡は、こう説明する。 「私は塩のイメージ以上に、大地の神秘、さらにいえば、自然がもたらすエネルギーを表現しようとしました」 塩はかくも慎ましく、同時に力強くもある、大地の大いなる矛盾の一つなのだ。
Karelia Vázquez