SDGsの「S」と、75歳オーバーのばあちゃんたちがイキイキ働くローカルベンチャー
創刊号は、支援者の力も借りて全国30人以上の高齢者に取材して発行した。ちなみに、題字を書いたのは書道が趣味の85歳。現在はまだ大熊さんが編集長を務めているが、タウン誌編集の経験がある「ばあちゃん編集長」候補も後に控えるという。 地元出身の大熊さんは、2019年にうきはの宝を創業する前、地域の高齢者の無料送迎サービスを運営していた(サービス名は「ウーバー」ならぬ「ジーバー」)。のべ3000人の高齢者とやりとりをする中で見えてきた二つの大きな課題が「孤立」と「困窮」だった。 「一人暮らしが多いし、家族と一緒でも孤立しているという人もいました。多くの人が口にするのが年金プラス2~3万円あると生活が楽になる、ということ。だから体が元気なうちは働きたいと思っているんだけれど、75歳以上が働ける場所が全然ないということがわかってきて」 「働きたいが、働ける場所がない」という彼女たちが働くための場として作ったのが、この会社だった。だから目指したのは、ばあちゃんたちの「生きがい」と「収入増」の両立。そこから考えると、ばあちゃんの得意とか「やりたい」気持ちありきで仕事を作るというのは自然な発想だったという。 「まず食堂から始めたのは、たまたま料理が得意なばあちゃんが多かったから。その後体制やプロダクトはいろいろ変わりましたけど、目的だけはずっとブラさずにやってます」
コロナの影響、派閥争い。規模は小さくなったが......
うきはの宝の事務所は、もともと保育園だったという敷地にある。取材当日は2人のばあちゃんが調理場に立ち、地元産イチジクを干したものをハサミで細かく切る作業をしていた。パンケーキの具として使われる予定という。 「まー、遠いところから、わざわざありがとうございます」 そう言って手製の大福を振る舞ってくれた内藤ミヤコさんは87歳。サツマイモ入りのパウンドケーキを作ってきてくれた内山ケイ子さんは82歳。ともに料理好きでおしゃべり好きというお二人の、心身の健やかさにはただただ驚かされた。「ばあちゃんたちがイキイキと働く会社」という看板に偽りはないようだ。