坂本花織「いい時ばかりではないと経験できた」GPファイナル連覇を阻んだのはアメリカの25歳
【次に活かせるかどうか自分次第】 中1日を置いた7日のフリーでも坂本は逆転劇を見せることなく終わった。 SPと同様に躍動感にやや欠ける滑りながら、序盤の3本のジャンプはミスなく終えたが、その後のコンビネーションスピンは要素が足りず基礎点を低くしてしまう。続く3回転フリップは前につんのめるような着氷になって減点になると、後半の連続ジャンプ2本を含む得点源の3本のジャンプはすべて回転不足と判定される結果になった。 演技終了後にはホッとしたような表情を見せた坂本だが、フリーの得点は前戦のNHK杯より15点以上低い137.15点。合計201.13点で総合順位はグレン、千葉に続く3位。坂本は、実力を出しきれない結果になった。 「ショートに比べればフリーは自信を持って臨めて、練習してきたことを披露しようという気持ちで全力を尽くせました。今の自分ができる演技の90%くらいはできたのでそれなりに満足はしていますが、ショートでミスしてしまったのが点数に響いた。本当にミスなくまとめるというのが大事なんだということをあらためて点数を見て感じました」 翌季の五輪シーズンへ向け、自分自身を変化させようとしている今シーズン。 「いい時ばかりではないんだということも、この大会で経験できた。次に活かせるか活かせないかは自分次第だと思います。これも自分を知るための経験だと思って、これからも頑張っていきたいです」と、坂本は自分を納得させる。
【25歳の新女王が日本勢に刺激】 一方、初出場のGPファイナルで2位になった千葉も、SPに続いてフリーでも課題を残す結果になった。3本目の3回転ループは着氷で尻もちをつきそうになるジャンプで「q」判定となり、後半の2つの連続ジャンプはともに3回転ルッツがノット・クリア・エッジ。最後の3回転フリップも軸が少し斜めになってGOEを稼げずに終わった。 「フリーの演技はとても完璧と言えなかったですが、それでもループの着氷で耐えたり、最後のフリップもけっこう危なかったけど、全体的にまとめることができたのは大きな成果だと思います」 千葉はそう振り返る。うれしさと反省が入り交じる銀メダル獲得となった。 対して最終滑走のグレンは、冒頭のトリプルアクセルを危なげなく決め、3回転サルコウや3回転フリップでミスがありながらも、合計を212.07点にして初優勝を果たした。 2022年北京五輪後には坂本らと競り合ってきたルナ・ヘンドリックス(ベルギー)やイザボー・レヴィト(アメリカ)、さらにはチームとしても張り合ってきた韓国勢が不調で、戦いの焦点が少しぼやけたようになっていた今季。 25歳になってから、挑戦し続けていたトリプルアクセルを安定させて世界のトップに躍り出たグレンの存在は、上位で戦い続けてきた日本勢にとっても大きな刺激にもなり、励みにもなる。 男子シングル編を読む>>
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi