寅子は“変わり者”、では花江は?朝ドラ『虎に翼』で描かれてきた「さまざまな女性の在り方」のこと
「法律を学びたい女の子なんて変わり者」から始まった朝ドラ
先日『ハマれないまま、生きてます: こどもとおとなのあいだ』という本を出版した栗田隆子さんと書店でイベントを行った。そのときに、栗田さんが話題にしていたのが「変人が生きやすい世の中が生きやすい世の中だ」ということだった。 【画像】寅子、花江、梅子…彼女たちの描かれ方が「憲法14条」に繋がる理由とは コラムを書くにあたって『虎に翼』を1話から改めて見直してると、この栗田さんの言葉が幾度となく思い出された。 第2週の冒頭では、『虎に翼』の主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)の母親のはる(石田ゆり子)は、法律を学ぶために明律大学の女子部に通うことになった娘に対して「いったいどんな子が来るのかしら。法律を学びたい女の子なんて変わり者に決まってます」とつぶやいていた。 法律の道を志し朝鮮半島から日本に来た留学生・崔香淑=チェ・ヒャンスク(ハ・ヨンス)が兄と日本に来た経緯を語る場面でも、「周りから見れば変わり者きょうだいです」と自嘲気味に言うと、それを聞いた桜川涼子(桜井ユキ)が「変わり者、いいんじゃなくて、私は好きよ」と、続いて寅子も「私もです」と返すやりとりがあった。司法省で働くことになって出会った久藤判事(沢村一樹)も、裁判官の小橋浩之(名村辰)から「変わり者」と何度も評されていた。法曹界で活躍したいと考える寅子の同窓の女性たちも、はるさんの言う通り、女学校を出て結婚するという多くの人が進む人生を選ばない時点で「変わり者」だろう。 『虎に翼』は、寅子も含めて、数多くの「変わり者」が出てくる話なのである。しかし、このドラマで「変わり者」というのはネガティブな意味ではない。 はるが寅子に言った「変わり者」という言葉も、学びたい女性に対して偏見を持っているということではなく、当時の社会一般的な考え方を代表しているだけだろう。そこには、皆と同じように女学校を出て結婚するしか幸せになる道がなかったこと、それ以外の道を選んだ女性には、いばらの道が待っているのだと考えられていた当時の状況がうかがえる。 この朝ドラは、猪爪寅子が、そんな風に「当たり前」になっていることに対して、何か違和感を感じたときに、「はて?」と疑問を抱きながら、状況を少しずつ変えていく話であった。