智辯和歌山、相手の奇策を振り切り甲子園へ!昨夏初戦敗退の雪辱をはたす【24年夏・和歌山大会】
<第106回全国高等学校野球選手権和歌山大会:智辯和歌山 4-2 近大新宮>◇決勝◇29日◇紀三井寺公園野球場 【トーナメント表】和歌山大会 結果一覧 智辯和歌山が近大新宮を下して2年ぶり27回目の夏の甲子園出場を決めた。 準決勝まで4試合連続コールド勝ちで無失点と圧倒的な強さで勝ち上がってきた智辯和歌山。それに対して初の決勝進出となった近大新宮は1巡ごとに投手を変える大胆な継投策に打って出た。 経験値のあるエースの響 与一(3年)、技巧派左腕の田中 楓(3年)、140キロ台の速球を投げる小田島 一晃(3年)とタイプの違う投手を次々と繰り出し、智辯和歌山打線を5回まで無得点に抑える。 なかなか得点を奪えない智辯和歌山も先発を任されたエースの渡邉 颯人(2年)がこの日も安定感抜群の投球を見せた。2回、3回とカウント球の変化球が決まらずにそれぞれ2安打を浴びたが、「投げながら修正できたので、それ以降はまとまった投球ができたと思います」と4回、5回は三者凡退に抑えて、味方の反撃を待つ。 試合が動いたのは6回表、一死から途中出場の高桑 京士郎(3年)が右中間への二塁打で出塁。二死後に5番・松嶋 祥斗(3年)が三遊間を破る適時打を放ち、待望の先制点を奪った。 近大新宮は7回表二死からここまで全試合で先発していた背番号10の西田 悠朔(3年)を投入。しかし、智辯和歌山は西田をものの見事に攻略する。 安打と四球で一、二塁のチャンスを作ると、高桑の左前適時打で1点を追加。さらに8回表には9番・山田 希翔(2年)の適時内野安打と1番・福元 聖矢(2年)の右犠飛で2点を加え、着々とリードを広げた。 それでも近大新宮は5番手として登板した西島 大波(1年)が9回表を無失点に抑え、最終回の攻撃に望みを託す。 だが、中盤以降の渡邉は絶好調。4回から8回までをわずか1安打に抑え、1番から始まる9回裏の攻撃も簡単に二死を奪った。 このまま終わるかと思われたが、「今までやってきた通りに投げれば良かったところを先を見てしまった」(渡邉)と勝利への焦りが出て、3連打で満塁のピンチを招く。 それでも6番・井上 慎晟(3年)をショートゴロに打ち取り、これで試合終了と思われたが、「ビックリするくらいボールが伸びていきました」と遊撃手の山田希が一塁に悪送球。この間に二者が生還し、なおも一、三塁と同点の走者が出る状況となった。 ここで智辯和歌山の中谷仁監督は「ちょっと止められないような流れになってしまったので、一番球威のある中西(琉輝矢・3年)でちょっと空気を変えたい」と最速149キロ右腕の中西に継投。同点までは覚悟していたそうだが、「自分の力でねじ伏せるということだけ意識していました」と中西は力強いストレートで7番の吉岡 大翔(3年)をセンターフライに打ち取り、辛くも逃げ切った。 昨夏の和歌山大会は22年ぶりに初戦敗退、昨秋は県大会準決勝で田辺に敗れて近畿大会出場を逃しており、例年になく苦しい1年を過ごした智辯和歌山。主将の辻 旭陽(3年)は「しんどかったのがずっとあったので、それが報われた気がして良かったです」と優勝インタビューで涙を堪えることができなかった。 上下関係を見直し、学年関係なく言いたいことを言い合えるようにして、日本一を目指せる環境作りに取り組んできた1年間。その成果を披露する舞台にようやく立つことができた。 渡邉や中西などの強力投手陣を正捕手の上田 潤一郎(3年)が束ね、上位から下位まで満遍なく打てる打者が揃っている智辯和歌山。3年ぶりの全国制覇を目指して甲子園に乗り込む。