メルセデス・ベンツ「Gクラス」はEV化でどう進化した?お値段2635万円の価値はあるのか
● 「Gターン」「Gステアリング」オフロード車ならではの機能 発表会がスタートすると、メルセデス・ベンツ日本の社長に新しく就任したゲルティンガー剛氏が、記者席の後ろからG580に乗って登場した。そしてステージ脇に止まると、その場でクルッと急回転してみせた。これが、GシリーズのEVに搭載される新機能「Gターン」だ。 EVの4WDは、前後に配置された2つのモーターがそれぞれ左右のタイヤを駆動させるのが一般的。しかしG580は4つのタイヤそれぞれにモーターが配置されるのが特徴だ。タイヤを個別に動かせるので、たとえば右側の前後輪を前進方向に、左側の前後輪を後退方向に動かすことで、オフロードで行き止まりに遭遇したときなどにその場で車体を回転させることができる。ちなみにGターンは最大720度、車体が2回転するそうだ。 さらにオフロードで鋭角なコーナーに遭遇した際にそれぞれのモーターの駆動トルクを個別制御(後輪片側の駆動力を固定)して小さな回転半径で旋回できる「Gステアリング」機能も搭載された。 ゲルティンガー氏は「G580はオフロード走行でも高いパフォーマンスを提供する、メルセデス・ベンツのSUVとEV、両方の頂点に立つモデル。どんな冒険にも一緒に出かけたくなる、たくましくもチャーミングな存在だ」と話す。
● EVになり渡河性能が向上、水深85センチメートルでも走れる ルックスはICEのGクラスと基本的に共通だが、GターンやGステアリング以外にもオフロード性能が大きく進化した。たとえば渡河性能。ICEが最大700mmなのに対し、エンジンのエアインテークやマフラーが必要ないG580は最大で水深850mmまで進むことができる。オフロード走行時は低速を維持して走行。ドライバーはアクセルやブレーキ操作をすることなくステアリング操作に集中できる「オフロードクロール機能」も搭載された。 クロスカントリー系のクルマは、過酷な環境での走破性を高めるためにデフロックという機構を搭載していることが多い。デフ(デファレンシャルギヤ)とは、コーナリングで生じる左右タイヤの回転数の差を打ち消す装置。これによりコーナリング中でも自然に走ることができるが、ぬかるみなどでスタックして左右どちらかのタイヤが空転すると、空転しているタイヤに駆動力を伝えようとしてしまい、ぬかるみなどからの脱出が困難になる。そこでデフをロックして左右の回転数を同じにすることで、スタックしていないタイヤに駆動力を与える機構だ。 4輪それぞれにモーターが備わるG580にはそもそもデフが存在しないが、スタックした際には各輪のトルクを正確に制御してデフロックと同様の効果を生み出す仮想ディファレンシャルロックが備わっている。