【川崎乳児殺人遺棄事件】「事件は自分の責任が大きい」…妊娠を誰にも相談せず1人で出産した女性の「元交際相手」の男性が語った後悔と決意
2年前、神奈川県川崎市のマンションのごみ置き場から袋に入った赤ちゃんが見つかった。まもなく逮捕されたのは、このマンションに住む赤ちゃんの母親(当時24)だった。妊娠を誰にも相談せず、自宅の浴槽で出産した我が子を浴槽に沈め殺害、遺棄した罪に問われた母親。その母親と元交際相手の父親が法廷で語ったのは、自らの未熟さから赤ちゃんを失った強い後悔と更生に向けた決意だった。(横浜支局・久保杏栞)
■「妊娠」誰にも言えず…自宅の風呂場で1人で出産
2022年4月のとある日の朝、川崎市の自宅マンションである女性A子さん(当時24)が激しい腹痛を感じていた。同居していた交際相手の男性さんは会社に出勤していて不在。“1人”だった。 「子供が生まれそうだ」――約2か月前に感じた胎動で妊娠に気づいたときから、誰にも相談せず“1人”で抱え続けていた。もちろん病院にも行っていなかった。 腹痛を感じ風呂場に移動したA子さんは、湯船に湯を張ると、その中で“1人”で我が子を出産した。約2500グラムの男の子だった。 A子さんはその後、水中に生まれた我が子を一旦引き上げたが再び水中に沈め殺害。遺体をごみ袋にいれるとマンションのごみ置き場に捨てた。 約3週間後、A子さんは死体遺棄の疑いで逮捕。その後、殺人の疑いでも再逮捕された。(検察側の冒頭陳述と証拠調べによる)
■母親のネグレクト、学校でのイジメ…事件につながった女性の幼少期の経験
事件から2年がたった2024年6月、横浜地裁で裁判がはじまった。一般の人が裁判に参加する裁判員裁判で審理が行われた。 A子さんはタイ人の両親を持つが、日本で生まれ育った。父親の記憶はほとんどなく、一緒に暮らしていた母親との会話もほとんどなかった。母親のA子さんに対する子育てはネグレクト=育児放棄ともいえる状態で、暴力をふるわれることもあった。A子さんにとって母親は「怖い存在」だった。 はじめて学校に行ったのは小学校5年生のとき。それまでテレビを見て自力で言葉を覚えていたが、もちろん勉強にはついていけなかった。いじめも受けた。 中学校に進学しても状況が改善することはなく休みがちの学校生活。高校にもなんとか進学したが母親に隠れて中退した。 母親に何かを相談したことは一度もなく、母親がどうにかしてくれるとも思えなかった。そもそも相談の仕方すらわからなくなっていた。(弁護側冒頭陳述、被告人質問による)