「一般選抜は、機能しなくなる」 専門家が大学入試の将来を予測
大学入試が大きく変化していく中でも、注目のトピックとなっているのが、総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」の増加です。年内入試は今後も増えていくのでしょうか。多様な入試方法がある中で、どのように受験方法を選択すればいいのでしょうか。年内入試を中心とした大学入試の傾向と対策を専門家に聞きました。 【ランキング】日大の志願者数は2万人以上減少 志願者数が増加した私立大学1~20位 ※代々木ゼミナール提供の資料をもとに編集部で作成
国公立、私立大学ともに総合型選抜や学校推薦型選抜を実施する大学が増加し、半数を超える学生が「年内入試」で大学に入学しています。文部科学省の「大学入学者選抜実施要項」には「入試方法の多様化、評価尺度の多元化に努める」と示してあり、ペーパーテストだけではわからない能力を多様な選抜方法によって評価する動きが広がっていることが背景にあります。2016年には、東京大学で推薦入試(学校推薦型選抜)、京都大学で特色入試(学校推薦型選抜と総合型選抜)を導入しています。駿台予備学校で長年、入試情報責任者を務めてきた石原賢一さんは、「大学や受験生側の事情も大きい」と指摘します。 「少子化で受験生の確保に厳しい大学からすると、早めに入学者を確保したいという意図があります。一方、受験生や保護者は、コロナ禍を背景に先行きの見えない受験が続きました。一生懸命に受験勉強してきたのに、コロナにかかって本番の試験を受けられなかったらどうしようといった不安から、年内に進学先を決めてしまおうという動きが加速したのです」 年内入試の増加は、今後の大学入試にどのような影響を与えるのでしょうか。 「医学部など、志願者に対して定員数が少ないごく一部の大学・学部を除いて、一般選抜はほとんど機能しなくなっていくことが予想できます」
併願できる公募制推薦の広がり
国公立大学でも、年内入試が急増しています。 「国公立大学の年内入試は共通テストを課すところが多いですが、最近は共通テストを課さないケースも増えてきています。共通テストを受けるとなると合格発表は3月になりますが、共通テストが不要な場合は、年内に合否が決まります」 23年度の大学入学者を入試方法別に見ると、総合型選抜による入学者が国立5.9%、公立4.1%、私立17.3%、学校推薦型選抜による入学者が国立12.3%、公立26.0%、私立41.4%を占めています。 「学校推薦型選抜の中では、大学が定めた高校の生徒が出願できる指定校推薦や、協定校の高校の生徒が出願できる協定校推薦が増えています。一定学力以上の受験生を確保したいという大学側の狙いがあるのではないでしょうか。ある高校で、難関大学の推薦枠は余っているのに、中堅大学の推薦枠は埋まっているという話を聞いたことがあります。自分の高校に、行きたい大学の推薦枠があれば、恐れずに出願してほしいと思います」 学校推薦型選抜のうち、公募制推薦はどの高校からでも出願できます。関西では、20年ほど前から学力テストで合否判定し、併願も可能な公募制推薦を実施する大学もありました。一方、関東のそれは専願が基本でしたが、25年度入試で東洋大学が併願可能な基礎学力テスト型の公募制推薦を導入することになり、関東でも広がっていくきっかけになるのではないかと注目されています。