家庭の「食用油廃棄問題」を解決する「サビにくいオイル」を生んだ、日清オイリオの“すごい技術”とは
● サビにくい食用油! 3つの技術で開封後の風味と鮮度を維持 調味料と同じく、家庭内でのロス量第2位なのが食用油だ。今年2月に、一般社団法人ウェルネス総合研究所が発表した「食用油に関する意識・実態調査※2」によると、4人に1人が開封後の食用油を使い切れずに捨てた経験があることがわかった。 廃棄理由は、「容量が多すぎた」(42.7%)が最も多く、次に「においが悪くなった」(31.9%)や「味が悪くなった」(21.0%)が続く。つまり、油の酸化が廃棄の大きな原因になっていることが明確になった。 そんな食用油の廃棄削減にフィットするのが、日清オイリオグループが「サラダ油誕生100 年」の節目に新発売した「日清ヘルシークリア」だ。 これは「鮮度長持ち、サビないオイル」をコンセプトに開発された食用油で、2024年2月の発売からたった4カ月で、約200万本を出荷した最新のヒット商品だ。 同社ホームユース・ウェルネス食品開発センターの吉村和馬氏によると、「日清オイリオグループでは、2009年より食用油の酸化対策に注力してきました。具体的には、油の液面とキャップまでの空間に窒素を充填することでボトル内の酸素を追い出す技術『酸化ブロック製法』を生み出し、開封前の酸化を抑えていた」という。 新商品の「日清ヘルシークリア」では、「酸化ブロック製法」に、低温かつ高真空状態で油の精製を行う技術「Neo ナチュメイド製法」と、充填前の油の中に超微細な窒素の泡を注入して溶存酸素を追い出す新技術「日清ウルトラファインバブル製法」を加え、合計3つの酸化を防ぐ技術「ウルトラ酸化バリア製法」を採用している。 そうすることで、開封前だけでなく開封後の油の酸化抑制も成功させたのだ。同社のテストでは、室温20度の条件において、開封120日後も風味が変わらないことを確認しているという。
● 「においが気になる」 鮮度持続のアイデアは消費者から 開封後の鮮度の持続に着目したきっかけは、消費者からの問い合わせだった。 「これまでに行ってきた『どのような油が欲しいか?』というお客様アンケートでは、『カロリーが低い油』『揚げている時にはねない油』といったアイデアをご提案いただきましたが、一方、実際に当社のお客様相談窓口にお問い合わせでいただくのは、開封後の油のにおいや賞味期限に関する相談がほとんどでした。ここから、お客様が潜在的に求めているのは、開封後に酸化しにくい油だと導き出し、商品化に乗り出しました」 商品発売後の反応は好調で、「においが気にならなくなった」「美味しく食べられる期間が長いので嬉しい」といった声が届いており、吉村氏も「発案から完成までに3年の年月をかけた甲斐がある」と話す。 また、「日清ヘルシークリア」は家庭内食品ロスだけでなく、プラスチックごみ削減にも貢献している点にも注目だ。新商品で採用した容器は、背面の「とって」をなくし、代わりに6つのくぼみを付けることで、従来よりも約39%(900gペットボトル比)のプラスチック量削減に成功しているのだ。 「6つのくぼみは利き手や手の大きさに関係なくフィットします。また、手のひらに収まりやすいサイズ感で、収納もしやすく、最後の一滴まで注ぎやすい仕様になっています。これらの点が評価されて、今年8月に開催された『2024 日本パッケージングコンテスト』で食品包装部門賞を受賞しました」 今ある技術を詰め込み、容器も中身も人や地球環境に配慮し、まさに一般消費者ファーストな商品といえるだろう。しかし、日清オイリオグループは、現状に満足はしていないという。 「もしかしたら10年後にはまた別の問題が現れて、それに対応する新技術や商品が必要になるかもしれません。その時々に求められる商品を提供し続けられるように、これからも潜在ニーズの確認と技術向上に努めていきたいと思います」 (佐田佐知子/5時から作家塾®) ※1「食品ロス量(令和4年度推計値)」 https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/240621.html ※2 <食用油に関する意識・実態調査> 約6割が油の“酸化を意識”しているにも関わらずそのうち7割は“酸化対策知らず”困っている結果に https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000033.000079676.html
佐田佐知子