「萌えキャラ」ポスターは女性蔑視?何が問題だったのか
アニメ「のうりん」の女性キャラクターをイベントの告知ポスターに用いた岐阜県美濃加茂市観光協会が12月7日、「女性蔑視だ」などの批判を受け、ポスターの絵柄を差し替える事態となった。11月には三重県志摩市が同様の批判を受け、海女をイメージしたキャラクター「碧志摩メグ」の公認を撤回している。行政がいわゆる「萌えキャラ」を使ってまちおこしをする動きは全国各地で起きているが、今回なぜ、問題化したのだろうか。トランスジェンダーという立場からジェンダー論について多くの著作があり、アニメ文化にも造詣が深い、作家で甲南大学非常勤講師の佐倉智美さん(51)に話を聞いた。
全国で広がる「萌えおこし」
美濃加茂市観光協会がポスターに採用した「のうりん」は、農業高校を舞台に、農業のさまざまな問題を扱うライトノベルが原作。昨年テレビアニメが制作され、美濃加茂市が作品の舞台であることから、観光協会は作品とコラボした観光イベントを展開してきた。問題になったポスターは市内を巡るスタンプラリーの告知で、今回が4回目の開催。ところが11月4日に観光協会のツイッターでポスターの画像とともに告知したところ、イラストが「女性蔑視である」などとして11月29日にツイッター上で「炎上」。批判を受け、観光協会は12月3日、ポスターの差し替えを決めた。 行政などが、アニメ作品やアニメ調の美少女キャラクター、いわゆる「萌えキャラ」を用いてまちおこしをする手法は「萌えおこし」と呼ばれ、近年全国各地で見られる取り組みだ。佐倉さんは「まちおこしのために行政がアニメとコラボしたり、萌えキャラを用いること自体は悪くないことで、成功事例もある」と話す。実際、美濃加茂市でも、観光協会によればこれまで「のうりん」とのコラボ自体は市内で好意的に受け止められており、今回のスタンプラリーの参加店舗数も前回の倍に増えていたという。
「視点の偏り」に注意が必要
では、地域が「萌えキャラ」を利用する際、どのような場合に問題となるのか。佐倉さんは今回の「のうりん」や「碧志摩メグ」の炎上は「ポスターとして作られたものの一部に性的と感じさせる部分があった点が適切ではなかったのではないか」と指摘する。