非常戒厳で真夜中のウォン急落 「寝耳に水」慌てて円買い 大統領弾劾で韓国株下落も
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日夜に「非常戒厳」を宣言し、外国為替市場で同国の通貨ウォンが急落した。3日夜には、一時1ドル=1440ウォン近辺と約2年ぶりの安値水準を付けた。ウォンから逃避したマネーは円など他の通貨に向かった。4日未明に戒厳令が解かれると、金融市場は次第に落ち着きを取り戻し、韓国発の動揺は収まった。 【図で解説】韓国の非常戒厳、今後の展開は 尹大統領の弾劾可決も 「寝耳に水の出来事だった」。三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは突如出された戒厳令に戸惑う投資家の心情をこう代弁した。 ウォンに代わる受け皿となったのが円だ。米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測から、金利低下が見込まれるドルを売って円を買う動きが出ていたところに、ウォン安のショックが重なった。円は3日深夜に一時、1ドル=148円台後半と約1カ月半ぶりの高水準まで跳ねた。 4日未明の戒厳令の解除に伴い、韓国発のリスク回避の動きは一夜のうちにほぼ消え去った。午後5時時点の円相場は1ドル=150円台前半。 ただ、韓国経済を巡る不透明感が払拭されるのはまだ先の話だ。尹氏に対する弾劾手続きが進むことはほぼ確実な情勢で、市場はこの先も韓国の政情をにらんだ展開となりそうだ。 第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「政権も国会も左派一色の様相が強まると、韓国財閥への圧力が強まる可能性がある」と指摘する。韓国株は夏場以降、下落傾向が続くが、今後の動向によっては、海外投資家の投資意欲が一段と減退するリスクがありそうだ。(米沢文)