上田西・山口 謙虚な努力家左腕が見せた好投 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会は第4日の23日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦が行われ、初出場の上田西は広島新庄に延長十二回の末、0―1でサヨナラ負けした。投手戦を1人で投げ抜いた上田西の山口謙作投手(3年)だったが、最後に力尽きた。 延長十二回裏、162球目のスライダーが甘く入った。2死一塁から右越え二塁打を浴びる。カバーに入った本塁の後ろで、サヨナラという現実を突きつけられた。両ひざに手を置き、うなだれる。細身の好左腕は、あふれる涙を袖で拭った。 「スライダーのキレが予想以上だった」。相手の先発メンバーに左打者が7人並んだこともあり、捕手の小川と話し合って外のスライダーを中心に投球を組み立てた。プレートの一塁側を踏んで投げるため、左打者には背中の方から外へ逃げる軌道。広島新庄打線は当てるのが精いっぱいで、十一回まで散発5安打無失点。甘く入った最後の1球を除いては、ほぼ完璧な内容だった。 大会前は昨秋の公式戦で出場校中トップのチーム打率4割8厘をマークした強打線に注目が集まったが、冬の間に走り込みとトレーニングで下半身や体幹、肩回りを強化。「親が謙虚に育ってほしい、という思いでつけてくれた」という謙作の名前の通り、いてつく冬の信州で地道に土台を作った。 「一冬越えて成長した姿を見せられた」。努力が実ったが、「この悔しさは忘れない」の言葉にこそ、実感がこもる。スタミナと球威をつけて、甲子園に帰ってくるつもりだ。【高橋秀明】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。