【残り1カ月】駆け込みで「ふるさと納税」してはいけないNGパターンとは
● 確定申告とワンストップ特例はどちらがお得か ここまで見てきたのは、確定申告によって控除を受ける場合だが、ふるさと納税には「ワンストップ特例制度」に沿った手続き方法きもある。一言でいえば確定申告が不要の申請制度であり、寄付をする自治体に「特例申請書」「本人確認書類」を郵送やオンラインで申請するだけで手続きは完了する。ただし、同制度が利用できるのは、年間で五つの自治体まで(※6)。6自治体以上への寄付は、確定申告が必要になる。 また、寄付した自治体が五つ以下でも、住宅ローン控除初年度や医療費控除、給与収入が2000万円を超える場合や副業を持つ場合など、確定申告が必要な人はワンストップ特例制度が使えないので要注意だ(※7)。 それでは、確定申告とワンストップ特例制度とでは、どちらがお得なのか。 ワンストップ特例制度では、寄付金が住民税のみから控除される。であれば、所得控除で還付が見込める確定申告の方が一見お得に見えるのだが……。結論は「どちらもほぼ同じ」である。これは、双方の控除額の計算方法が違うためで、所得税に詳しい税理士によれば、「納税者の条件によっては、数円程度の僅差でワンストップ特例制度の方がお得な場合がある」ということだ。 ● 損しないために!「駆け込み利用NGパターン」 では、まとめに代えて、残り1カ月の今年のふるさと納税期間に「駆け込み利用NGパターン」を確認しておこう。慌ててラストスパートをかけ、駆け込みで寄付を追加してしまうと、“税金面で損する”ことがあるからだ。いずれも、上限まで控除可能な「ふるさと納税限度額」を今一度確認しよう。 一つは、住宅ローン控除を受けている場合。住宅ローン控除は、所得税控除の対象だ。ただし、所得税の控除の際は、先にふるさと納税が、その後に住宅ローンが控除されるため、所得税から控除し切れない住宅ローン控除部分が出ることもある。 この部分は住民税から控除されるのだが、住宅ローン控除には住民税の控除限度額が設定されているため、超過分は切り捨てられてしまう(※8)。つまり、税額軽減の恩恵を100%受けることができない可能性が生じるのだ。もし、住宅ローン控除2年目以降なら、ふるさと納税分は確定申告ではなく、住民税だけから控除されるワンストップ特例制度の利用をお勧めしたい。 もう一つは、個人事業主や副業を持つ給与所得者のように、12月31日にその年の収入が確定する人で、収入が大きく減る見込みのある場合。年収によって控除できる寄付総額の上限は異なってくるので、収入が減れば自己負担分が大きくなることも考えられる。 ふるさと納税の税制……今回は、複雑なその仕組みのふたを開けてしまった。重要なのは、人それぞれで条件が異なるが故に、控除が受けられる上限も変わってくること。この点をしっかり把握し、申請前に自分の条件を確認した上で制度を上手に利用していただきたい。 ※6 五つの自治体までなら各自治体への寄付回数に制限なし、ただし寄付ごとに要申請 ※7 ふるさと納税トピックス(総務省)参照 ※8 住民税から控除できる住宅ローン控除額は、原則として前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(上限9万7500円)
宮口貴志