高速道路を使わないユーザーには無駄? 「三角表示板」がなぜか標準装備にならないワケ
三角表示板が命を守る理由
表示義務があるため、 「メーカーが標準装備にすればいいのに」 と思う気持ちも理解できる。しかし、標準装備にすることで、そのコストは車両の価格に反映されることになる。 例えば、トヨタの純正三角表示板は税込み2750円で、あまり高い金額ではないと感じるかもしれないが、高速道路を利用しないユーザーにとっては無駄な出費となる。標準装備にしないことで、必要ないユーザーに余計な負担をかけないメーカーの配慮と見ることもできる。 三角表示板の重要性を考えれば、標準装備を希望する声もあるだろう。実際、NEXCO中日本では2022年に33件の交通死亡事故が発生し、そのうち 「14件」(42%) が高速道路で停止している車両との衝突だ。このように、三角表示板の提示義務が求められる状況での重大事故が多いことがわかる。 そのため、NEXCO中日本も後続車に対して停止表示器材を使った合図を強調している。三角表示板が重大事故の防止に役立つことを考えれば、メーカーが標準装備にするべきだという意見にも納得できる。
運転者の意識改革がカギ
三角表示板について、発炎筒と同じように 「搭載を義務付ければ問題は解決する」 と考える人もいるだろう。確かに、表示義務があるのに搭載義務がないのはわかりづらい。しかし、ドライバーが高速道路を利用することに関して、法律が制定された当時と現代では大きな違いがあるかもしれない。 道路交通法は、戦後の復興期を経てモータリゼーションの進展に対応するため、1960(昭和35)年に制定された。その後、交通事情の変化に合わせて何度も改正されてきた。最近では自転車に関する改正もその一例だ。しかし、半世紀以上が経過した今、改正には限界があるかもしれない。自動運転技術の進歩や自動車社会のデジタル化に対応する必要があることは確かだ。 ここで考えたいのは、三角表示板が標準装備に義務化されたとしても、車両の 「保安装備を調える責任」 は最終的にドライバーにあるという点だ。標準装備が導入されれば、高速道路で緊急停止した際に表示板が車載されていないという事態は防げるだろう。しかし、安全装備に対するドライバーの意識が低ければ、標準装備された表示板がどこにあるのかすらわからないという事態が生じる可能性がある。 一度、自分の車に三角表示板が搭載されているか確認してみてはいかがだろうか。使ったことがない人は、実際に取り出して組み立ててみることをおすすめする。もし搭載されていなければ、いざという時のためにカー用品店で購入を検討することも、安全意識を高める一助となるかもしれない。
喜多崇由(フリーライター)