与謝野晶子が『光る君へ』の時代を生きた女性に親しみを抱いた理由とは?『源氏物語』や『紫式部日記』を読んでわかったこと
◆常識にとらわれず型にはまらない学びを 常識というものは、型の記憶を繰り返すものに過ぎません。 過去が現在に役立っている、それが常識です。 常識家というものは、いろんなことを知っていて、生きた百科事典のようなものです。 石橋をたたいて渡るというふうな、堅実な生活を基礎づけるためには役立ちますが、保守的にかたむきやすく、新しい生活の発明家にはなりにくいという欠点があります。 こうしたことを考えないで、常識を教えこもうとすると、人間の生活は停滞し、進歩しなくなってしまいます。
◆個性の創造 常識が不足しているのも困りますが、それがあまりありすぎて、肥満した人の心臓が脂肪過多で圧迫されるように、人間の命である想像力を萎縮させてしまう結果になっては困ります。 個性の独立を主張する時代にあっては、他人の型や法則をまねる必要はありません。 中学以上の教育においては、個性の創造を主として指導しなければなりません。 受験の準備のためでなく、個人の希望と長所に従って、自由に学べる制度を望みます。 「伊豆山より」(『人間礼拝』より) ※本稿は、『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
与謝野晶子,松村由利子
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