給食で学ぶ循環型農業 廃棄物⇒アブ幼虫⇒鶏の飼料 山形県三川町
「元気に食べるんだぞ」。子どもたちが、食品の生ごみとヤマダイミズアブ(アメリカミズアブ)の幼虫が入ったプラスチック製コップをのぞき込んだ。 給食の残さを食べさせるヤマダイミズアブを観察する子供たち(山形県鶴岡市で) 山形大学農学部(山形県鶴岡市)の佐藤智准教授は、ヤマダイミズアブの幼虫に食品残さなどを食べさせ、ふんを肥料に、育った幼虫を鶏などの飼料にする循環型農業を研究している。学内や市内ホテルなどから食品廃棄物を集めて実証試験を進める一方、地元の子どもたちの環境教育の教材としても活用する。 この日は、三川町立押切小学校の4年生25人が研究室を訪れた。給食の調理時に出たキャベツの切りくず、ナスやタマネギの皮などをミキサーで細かくする。大学の売店で売れ残った弁当や菓子と混ぜ、幼虫の餌を作る。 「臭ーい」。子どもたちの声に佐藤准教授が応える。「でも、それが現実だよ」。地球環境を考える機会にしてほしいと願う。 残さ30グラムに対し、幼虫10匹を入れる。佐藤准教授が「一番でっかくした人が優勝だ」と声をかけた。授業はインドネシアの小学校ともオンラインで結び、3週間後の大きさを競う。通常は5ミリ程度の幼虫が約3センチに成長する。どういう残さを与えると幼虫が成長するのか考える学習だ。祖父や父がブランド米「つや姫」を栽培する菅原悠成さん(9)は、炭水化物やスイーツを多く入れた。「幼虫が大きく育つようこだわった」と胸を張った。 校内に野菜畑やミニ水田がある同校では、ヤマダイミズアブが作った肥料をまいて、循環型農業も学ぶ機会にもしたいという。 4年生が大学の研究室から小学校に帰ると、もうお昼。100人超の全校児童が会し、自校で調理した出来立ての給食に舌鼓を打つ。この日の献立は町内産「はえぬき」を使った鶏飯と町内で取れたエダマメなど。町内産の農作物が多く登場する同校では、給食の食べ残しが少ないという。菅原さんはもちろん完食。「日本のごみ問題が良くなったらいいな」と、振り返った。
日本農業新聞