主役交代で加速する「AI株相場2.0」、エヌビディアの“次”に来る企業は?【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
※本稿は、チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
------------------------------------- 【目次】 1.息切れするエヌビディア相場 2.主役交代で加速するAI相場2.0 3. 「AI帝国」グーグルの逆襲 ------------------------------------- AI株といえば、機械学習に使われる最先端の画像処理半導体(GPU)をほぼ独占的に供給するエヌビディアの独壇場が続いてきました。エヌビディア株は2023年5月の決算発表で市場参加者の多くを驚かせて以降これまで約5倍に上昇し、米ハイテク株の上昇をけん引してきました。 そんなエヌビディアが主役のAI株相場も約1年半が経過し、その上昇ペースには息切れが目立つようになってきました。一方、足元の株式市場に目を転じると、AI株の主役交代へ向けた動きが加速しつつあるようです。
1.息切れするエヌビディア相場
これまで圧倒的なパフォーマンスで米国株式市場の上昇をリードしてきたエヌビディア株ですが、さすがに息切れが見えるようになってきました。AI向け半導体のリーディングカンパニーとされるエヌビディアは、抜群の収益性を誇る優良企業であることに異論を唱える向きはほとんどないでしょう。とはいえ、株価はまだ織り込まれていない材料や変化に反応するのが常なので、「良い会社」と「良い株」が必ずしも一致しないことには注意が必要でしょう。 〈利益率改善は頭打ち、増益ペースは減速〉 ■エヌビディアの決算内容を見ると、2024年8-10月期の営業利益率は実に約62.7%にも達しています(図表1)。自社の生産設備を持つ半導体メーカーはもちろん、企画・デザインに特化して工場を持たない「ファブレス・メーカー」と比べても、その利益率は圧倒的な高水準となっています。これまでAI向け半導体ビジネスが急成長する過程でエヌビディアの営業利益率は飛躍的に向上してきましたが、営業利益の水準が限界利益に近づいてきたことなどから、更なる利益率の改善を望むのはだんだん難しくなってきています。 ■また、エヌビディアの増収ペースは減速傾向にあります。2024年11月-2025年1月期の売上高の会社予想は前四半期比約9.2%のプラス、年率で約42.1%の増収見込みとなっています(図表1)。もちろん、通常の会社に比べればとても高い成長率なのですが、昨年来の増益ペースと株価の上昇ピッチに目が慣れてしまっていると、物足りなく感じる投資家も少なくないのではないでしょうか。 ■利益率が上限に近づき、増収ペースも一時の勢いを失ってくると、今後の株価の上昇ピッチの変化に繋がるのではないでしょうか。仮に、これまでの極めて高い成長期待が剥落するようなら、株価はそうした成長トレンドの変化を織り込む過程でいったんは調整局面に入り、もみあいを経て巡航速度の株価推移に移行していくといったシナリオも現実味を帯びてくるように思われます。そう考えると、過去1年半で株価が5倍に上昇したことの方が、むしろレアケースだったのかもしれません。 ■エヌビディアは今後もAIの発展に寄与する優良企業の一つと言えそうですし、半導体の供給を通じて業界で主要な地位を占めるものと思われますが、こと株価に関する限り「美味しい時期」を過ぎてしまった可能性があります。
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