東出昌大「山から鹿を下ろした事がある人でないと書けない」 クマと猟師の死闘を描く直木賞受賞作『ともぐい』がランクイン[文芸書ベストセラー]
2月27日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『とんでもスキルで異世界放浪メシ 15 貝柱の冷製パスタ×賢者の石』が獲得した。 第2位は『望月の烏』。第3位は『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』となった。 【写真を見る】雰囲気がありすぎる!白いシャツで佇む「東出昌大」さん…実は読書家という一面も 2位の『望月の烏』は阿部智里さんによる異世界ファンタジー「八咫烏シリーズ」最新作。2012年にはじまった同シリーズも今作で12作目(外伝含む)。2020年からスタートした第二部の第四巻となる。メディアミックスも進んでおり、『望月の烏』の発売日2月22日にはコミック版「烏は主を選ばない」の5巻(松崎夏未[著]阿部智里[原作・監修]講談社)も発売された。また4月からはNHKにてアニメ版「烏は主を選ばない」も放送される。 4位以下で注目は9位にランクインした『ともぐい』。人間と動物の物語を書いてきた作家・河崎秋子さんが猟師とクマの死闘を描く。1月17日に発表された第170回直木賞の受賞作だ。Book Bangには俳優でありながら猟師として生活もしている東出昌大さんによる書評が掲載されている。東出さんは主人公の猟師について《少ない言葉から読み取れる思考は、文明の中で生きる人々から見れば粗暴に映る。しかし「美味いものがあれば食う」「メスがいれば交尾をする」「生きるために狩る」と言うだけで、そこに欺瞞や虚飾はない。》《まるで、寒さ厳しい雪山で、裸一貫で逞しく生きる動物のよう》と例える。読みすすめると《里で社会を形成し暮らす人間の考え方に不自由さと違和感を覚える。それは現代にも共通する「嘘くささ」のようなものではないだろうか》と私見を交えながら語る。鹿撃ちのシーンに《山から鹿を下ろした事がある人でないと書けない場面》とリアリズムを感じ、自分が撃った死体と向き合うことで主人公のパーソナリティが出来上がったのではないかと述べる。物語が進むと熊との死闘が描かれ《圧巻のシーンの連続だった》と絶賛し、《冬山の厳しい寒さを経験した事の無い人に、「厳しさも豊かさである」と教えてくれる一冊》と評している。