ノムさんに「あれ」と命じられて編み出したオリジナル魔球・高津臣吾さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(22)
僕はピンポイントで狙わないと、コントロールがつけにくいです。捕手は的が大きい方がいいとよく言われますが、僕だったら的が小さい方が、そこにフォーカスできます。的が大きいとストライクゾーンがぼんやりしてしまって、ピンポイントにはいきにくくなるのです。本当に角を狙わないと、そこに投げられないので、古田敦也さんには小っちゃく構えてくれと、ずっと言っていました。 ▽思い切り腕を振って遅い球を投げる達人技 野村克也監督にシンカーを投げろと言われたのは1992年の秋季キャンプ。そこから取り組み始めました。野村監督は「あれを投げろ」と言っただけです。(同じ年の日本シリーズで)西武の潮崎哲也に、あんな遅い球で抑えられたので、すごく印象に残ったのでしょうね。思い切り腕を振って100キロの球を投げるというのはすごく難しくて、おそらくほとんどの人ができないと思います。腕を振ってスピードを出さない方法をいろいろと考えました。握り方だったり、腕の使い方、肘の抜き方だったり。何種類も試して、これは使える、これは駄目とやっていき、自分に合ったオリジナルの握りや使い方をつくっていきました。
中指の外側を縫い目に引っかけ、中指と薬指の間から抜く。口で説明するのが難しいですが、深く握ってスピンをかけるイメージです。フォークボールは指で挟んで回転をなくして落とすんですけど、僕のシンカーは回転で落とします。カーブやスライダーと同じです。落ちる系の球ですが、フォークではなくチェンジアップに似ているかもしれません。(球の軌道によって)打者の目線や体が、ふっと上に1回上がる感覚があると、より効果的。ふっと上がる時点でタイミングが狂います。遅い球が来たと思って振りにいって、もっと遅かったというのが理想です。僕は変化の動きは大きくなく、スピードの変化がすごく大きかったと思います。奥行きというか、できるだけベースの前に(打つポイントを)引っ張り出すのです。 速いシンカーは低めの真っすぐが来たと思わせて振らせて、あっ、落ちていたというのが理想。2種類を使い始めたのは、プロ入り4、5年目ぐらいです。速いのを後に習得しました。遅いシンカーを何かちょっと打たれだして、変化は小さくていいから真っすぐに近いのを考えていきました。シンカーは8割はいかないけれど、半分以上は投げているでしょうね。真っすぐとシンカーで9割以上です。