ノムさんに「あれ」と命じられて編み出したオリジナル魔球・高津臣吾さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(22)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第22回は高津臣吾さん。日米通算313セーブの名クローザーは緊張を強いられるマウンドが数え切れないほどあったはずです。プロ野球選手であれば、究極のしびれる場面をぜひ経験してほしいと力説しました。(共同通信=中西利夫) ▽狙ったところにはいかない。それがコントロールというもの アンダースローにしたのは高校1年の春です。当時は他にスーパーエースがいて、同じような投げ方で勝負もできなかったので思い切ってアンダーにしました。大学に入ると、そのレベルに見合ったスピードや変化球が投げられず、生き残るために自分を変化させました。ちょっと腕を上げて球速を出して、という感覚で。 大学はすごく環境が厳しかったです。100人ぐらい部員がいて、本当に練習させてもらえるのは30人とか40人。練習に参加するため、打撃投手をさせてもらうために、どうすればいいか。そんなところからスタートしました。1日に何百球と投げるので、その時は本当にしんどかったけれど、無理やり投げたことが実になりました。今はそんなことをしたら駄目ですけど、歯を食いしばってやって良かったなと、後になって思いました。大学でずっと投げ続けたことは無駄じゃなかったです。
速い球を投げられるに越したことはありません。どんな球よりも速い球を投げるのが一番の武器でしょう。ただ、変わらないのはストライクゾーン。究極のコントロールは底がないというか限界がない部分なので、そこを突き詰めた方がいいのかなと僕はずっと思っていました。スピードは限界があるし、変化球もその人の体の使い方で投げられたり投げられなかったりします。制球力は磨けば、どんどん付いていくもの。そこで勝負していこうと思いました。 ほとんど狙ったところにはいかないですよ。バケツぐらいの大きさの枠であれば、すごい確率で投げられるかもしれないけれど、5円玉を狙って投げると、めったに当たらないでしょう。まあ、それがコントロールだと思います。ストライクゾーンには、ほぼ投げられます。10球投げたら悪くても8、9球は。ただ、本当の隅、ゾーンの角に投げられるのは2球、良くて3球。問題は全力で投げて、そこにいくかどうかです。プレッシャーがかかるとコントロールも乱れます。いいところにいったら勝てますし、狙ったところに投げられなかった球、もしくは甘いところにいけば打たれます。そういうところは割り切って投げていました。要は確率の問題です。