「日本のマンガが人気」というイメージに反して、じつは「フランス人の大人」はあまりコミックを読まないという現実
25~49歳 フランス人の大人はあまりコミックを読まない。電子コミックはもってのほか!
25~49歳の層、とくに女性はコミック読書を優先しない傾向が強い。多くは10代で小説に「移行」しており、コミックは時折読む軽い娯楽(「『本物の読書』ではない」)という位置づけで、デジタルコミックにはなおさら否定的だ。ただ、母親になった人たちは子どもといっしょにBDを読む。 大人になるとコミックに限らず「何を読むか」については非常に個人的な選択になり、周囲からの影響をあまり受けない。かつ、絵柄やジャンルなどよりもまず「題材・テーマ」を重視する。出会いの場所としては書店が最重要な場だが、書店の「おすすめコーナー」は本を手に取るきっかけにはなるものの、この年代になると必ずしも購入には結びつかない傾向がある(つまり「書店からの影響」すらあまり受けない)。 この年齢層のコミックに対する認識は、幼少期や10代の経験に左右されていて、最近のコミックの多様性についてはほとんど知識がない(かつ、「よく知らない」という自覚がある)。ただ、そこまで積極的ではないが、コミックについて知りたいというニーズも多少はある。
日本とのコミック読書・消費の違い
日本ではもはや「マンガ=若者文化」という見方は成り立っていないが、ここまででわかるように、フランスでは日本マンガは主にローティーンからミドルティーン向けのサブカルチャーとして受容される傾向が強く、一部が社会人になって収入を得てからカムバックする。 日本や韓国では大人向けのデジタルコミックの消費が活発だが、フランスは大人のコミック市場はそれほど巨大ではなく、ましてデジタルは現状では厳しい。 フランスで谷口ジローや松本大洋が高く評価されているからといって、芸術性の高い、大人の鑑賞に堪えうる日本マンガのマーケットが大きいかというとそこまでではないようだ。 「平均的なフランスのコミック読書」はこんな感じなのであり、「フランス人は日本マンガが大好き」と言ったときに日本人がイメージするものとは若干異なるだろう。JAPAN EXPOのようなイベントで日本人が目にするフランスのマンガファンは決して最大公約数的な「フランスのマンガ読者」の姿ではないのである。
飯田 一史(ライター)