生活保護「家族に“扶養照会”しないと受けられない」は“ウソ”…行政に課せられた“正しい運用ルール”と「どうしても知られたくない場合」の対処法【行政書士解説】
血の通った運用を
こうして申請書に扶養照会を拒否する意思を明記したケースで、勝手に扶養照会がなされたことは、私が申請書を作成したケースでは、上述の通り1つもありません。 なお、過去に1度だけ、申請書に記載した扶養照会を拒絶する意思を無視して、扶養照会を強行しようとした福祉事務所がありました。 要保護者の70代女性、その息子さんである申請者から「生活保護申請するなら親戚に連絡すると何度も言われ困っている」との相談を受けました。 福祉事務所と何度も電話でやり取りしましたが、一向にらちが明きません。 そこで、事実経緯と、扶養照会を強行しないよう求める文書を提出したところ、扶養照会はされないまま、生活保護決定となったことがあります。 実際のところ、福祉事務所によっては、マンパワーが足りていないなどの事情により、最新の通達や判例などが現場の職員にまで周知されていないケースもあります。 明らかに福祉事務所の対応がおかしいときは、都道府県(または政令市)の生活保護課に問い合わせてその旨を伝え、福祉事務所に連絡を入れてもらって、解決したことがあります。 生活保護という人命に関わりかねない制度について、自治体ごと、あるいは福祉事務所ごとに対応が異なるというのは、決して望ましいものではありません。すべての自治体が、扶養照会の判断基準を緩和した2021年の厚生労働省通知の趣旨に沿った、血の通った運用をしてくれるようになることを、切に願います。
三木 ひとみ