<ハリスも身内に足を引っ張られる?>敵に投票、離党… 民主党で内部対立が頻発する理由とは
それぞれ対立もある穏健派と左派
このような民主党の性格は今日でも続いており、民主党内に穏健派と左派の対立が存在するのは周知の通りである。ただし、穏健派、左派といっても、その内部もまとまっているわけではない。 例えば穏健派の中にも、労働組合を重視する勢力と、ニューデモクラットと呼ばれる勢力が存在する。1992年大統領選挙で民主党候補となったビル・クリントンらはニューデモクラットと呼ばれた。 80年代にレーガンを中心として共和党が影響力を増し、南部を中心にかつての民主党支持者が共和党に投票するようになったのを受けて、大きな政府の立場をとり続けるのは党に否定的な影響を与えると彼らは考えた。経済成長を重視し、時に労働組合と見解を異にすることもあった。これに対し、ヒラリー・クリントンやバイデンは労働組合の立場を比較的重視する政治家として知られている。
他方、左派には、格差是正などの経済問題を重視する人々、黒人やマイノリティ、ジェンダーやセクシュアリティをめぐるアイデンティティを重視する人々、環境問題を重視する人々など、さまざまな勢力が存在する。その中でも、経済問題重視派とアイデンティティ重視派に注目が集まることが多いが、両者は必ずしも折り合いがよいとはいえない。例えばサンダースは経済格差の是正を目指す立場だが、かつては人種やジェンダー、セクシュアリティをめぐって問題発言を繰り返していた。 選挙の際に左派は穏健派、そして共和党への対抗を目指して協調するが、権力の座につくと利益集団の連合体としての側面が浮上し、対立が鮮明になる。例えばアレクサンドリア・オカシオ=コルテスはサンダースの選挙戦で経験を積み、当初経済左派として自らを売り出したが、議員になるとアイデンティティ重視派となって経済についてほとんど勉強しなくなった。そのため、経済左派の中では不信が募っているといわれている。 このように、穏健派、左派といっても、それぞれが一枚にまとまっているわけではなく、内部対立は大きく存在しており、これが党内での混乱を生んでいる。 また、これらのカテゴリーは相対的であり、穏健派対左派という対立の構図におさまらない人物も存在する。2028年の大統領選挙の有力候補になると期待されているカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムは、経済的な意味ではニューデモクラットの立場をとっていて、労働組合や経済左派と相いれないところがある。他方、サンフランシスコ市長の時代に米国で初めて同性婚を認めた点で、アイデンティティ重視派の支持を得ている。