<ハリスも身内に足を引っ張られる?>敵に投票、離党… 民主党で内部対立が頻発する理由とは
歴史的背景
米国の民主党はリベラルな政党だと指摘されるが、米国におけるリベラルという言葉の意味はヨーロッパのそれとは異なっている。ヨーロッパでは小さな政府の立場を提唱する立場がリベラルと呼ばれ、福祉の拡充を目指す立場は社会民主主義と呼ばれる。米国におけるリベラルは、ヨーロッパにおける社会民主主義の意味に近い。 そのようなリベラルの意味が確立したのは、フランクリン・ローズヴェルト政権期である。米国では歴史的に連邦政府の権限拡大を忌避する観点から、19世紀に至るまで連邦政府が積極的な役割を果たすことはなかった。 だが、大恐慌に際し、ローズヴェルト大統領がさまざまな社会立法を実施するようになった。ニューディール派が自らのことをリベラルと称するようになったことが、米国的な意味でのリベラルの語源である。 ただし米国の政党はイデオロギー的な意味で一貫しているわけではないため、民主党の政治家も支持者もこぞって進歩的な政策を追求しているわけではない。そもそも、ニューディール政策も一般的にイメージされているほど進歩的な性格を持っていたわけではない。大恐慌中で非常に強い支持を集めたローズヴェルト大統領であっても、思い通りの政策を全て実施することができたわけではなかった。
例えば、それまでさまざまな州で実施されていたような公共事業を実施したり、複数の州で導入されていた社会保障(年金)を公的に制度化したりすることには成功した。だが、どの州でも実現されていなかった皆医療保険政策を実現することはできなかった。そして、ローズヴェルトの後任であるハリー・トルーマン大統領も国民皆医療保険制度の実現を目指したが、挫折した。 ヨーロッパや日本などの国々が第二次世界大戦の際に国民皆医療保険政策を達成したのとは対照的である。そして、それらの試みを妨害したのは、南部の民主党勢力だった(実は米国の福祉国家の発展を最も大きく制約したのは南部の民主党勢力だったという説も有力である)。