急成長するエンジニア集団「SHIFT」社長が明かすM&A奥義
ソフトウェアテスト事業を展開するSHIFTは、エンジニアの正社員数を大きく増やしつつ、急速に事業規模を拡大させている(イメージ写真: asaya /PIXTA)
2カ月に1社というペースで矢継ぎ早にM&Aを進める急成長企業がある。ソフトウェアの品質保証を手掛けるSHIFT(シフト、 3697 )だ。2014年の上場以来、売上高を毎年5~6割伸ばし、10月に発表した直近の2021年8月期(2020年9月~2021年8月)決算は売上高460億0400万円(前期比60.2%増)、営業利益は39億9400万円(同69.8%増)となった。 エンジニアの正社員数は今年8月末時点で約3900人とこの5年で約10倍に増え、毎月の取引顧客数は461社と4倍以上に拡大。自社の採用力や営業力、そしてM&Aで成長を加速してきた。株式市場からの評価も高く、2021年初から株価は2倍に急騰。時価総額は一時5000億円を超え、現在も4500億円前後だ。 シフトは顧客企業が開発したソフトウェアやサービスを単にテストするだけでなく、M&Aで領域を拡大し、それ以前の企画や設計、開発、管理、さらには完成したサービスのマーケティングや営業までを担おうとしている。 創業者の丹下大社長は、「自社でアイデアやサービスを持っていないIT企業のような存在。だが既存のSIer(エスアイアー。ITシステム構築などを行うシステムインテグレーターを指す)とも違う」と独自の立ち位置について表現する。シフトが目指す姿や矢継ぎ早のM&Aの狙いは何か。丹下社長に直撃した。 ――そもそも、なぜソフトウェアのテスト事業を始めたのでしょうか。 国内IT市場16兆円のうち、ソフトウェアテストの市場は5.5兆円。ただその中でも(ソフトウェアのテストを外部委託する)アウトソーシングはわずか1%ほどだ。これまではSIerが開発とテストの両方を担ってきた。 ただ、プログラムを書く人は、自分はコードを正しく書いていると思っている。そのため、不具合はまったく違うバックグラウンドの人が、無邪気に見つける方がよい。だから(開発とテストは)別々の会社がやるべきだと思っている。 これまでもベリサーブ(SCSK〈 9719 〉子会社)やデジタルハーツホールディングス(3676)などテスト専業の会社はあったが、それらの売上高を足しても数百億円単位。あまり認知されていない業界だった。僕らはこの分野を強くアピールして、マーケットを作っている。 それにテストはITの中でも最も非効率な領域だった。ソフトウェア開発の工数のうち、40%くらいはテストが占める。なのに、モチベーションの低いプログラマーだったり、プログラマーではない人、さらには新卒社員がやっていた。それではバグも見つけられない。そこから効率化するために、テストに目をつけた。
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中川 雅博