日本の生保が為替ヘッジ比率を削減、さらに縮小の可能性も-外国証券
(ブルームバーグ): 日本の生命保険会社は、為替相場の円高進行で生じる損失に備えたヘッジ比率を過去10年間で最低水準まで引き下げた。今後数カ月でさらに引き下げる可能性がある。
ブルームバーグが生保大手9社の決算報告をまとめたところ、外国証券のうちデリバティブ(金融派生商品)を活用して円高進行時に損失をヘッジしている比率は3月末時点で47%だった。これは2011年9月以来の低さで、63%まで上昇していた20年3月から大きく減少した。
為替ヘッジの削減は、円安がさらに進行する、あるいは海外で得た投資収益を相殺するほど円高が進まないと生保各社が予想している可能性を示唆している。直近1カ月で円は対ドルで1.4%下落し、主要10通貨(G10)の中で最大の下げとなった。
マネックス証券の相馬勉債券・為替トレーダーは「金利差があまり縮まるとは思えず、生保としても積極的にヘッジを急ぐようでもないだろう」と予測。「全体のヘッジ比率は下降気味を維持するか上がるような感じではなく、そういう意味での円高圧力は今のところ見えてきていない」と言う。
円安懸念は、日本と主要国との利回り格差拡大だけが原因ではない。日本経済の競争力が低下する中、企業は海外市場に活路を見い出し、直接投資による資本流出も増加している。
金利見通しも足かせとなる。ユーロ圏やカナダ、スイスなど一部の中央銀行は政策金利を引き下げた一方、日本銀行は3月にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)とマイナス金利政策を解除した後も追加利上げを含めさらなる金融正常化を目指す。
ただ、国内外の短期金利には依然大きな差があり、為替のヘッジコストが高水準にとどまっているため、ヘッジ付き外債の利回りは引き続きマイナスになっている。米国の10年国債で見ると、ドル下落に対するヘッジを持つ日本の投資家の利回りはマイナス1.2%と、ヘッジなしの4.22%と比べ低さが顕著だ。