娘にHPVワクチンのお便りが届いた 性交渉の経験は確認しないといけないの?…「ある」と子宮頸がん予防の効果はどうなるか
かなこ先生のウェルエイジング講座
加齢を前向きにとらえ、年齢を重ねながら心豊かに生きていく「ウェルエイジング」のコツを、産婦人科医の稲葉可奈子さんが伝えます。 【図表】子宮頸がん検診 細胞診とHPV検査の違い
「HPVワクチンってどうなんでしょう?」 更年期障害の治療で受診された女性から、こんな相談をよく受けます。自分のお子さんにHPVワクチンを打たせるべきかどうか、迷われている方は多いと思います。自治体からお便りが届いてもスルーしてしまった――。こういう方もいらっしゃると思います。
わずか2か月で中断
HPVワクチンは、子宮頸(けい)がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染するのを防ぎ、がんを発症しないようにすることを目的としています。2013年4月、小学6年から高校1年生相当の女子を対象に定期予防接種の対象となりました。しかし、接種後に、体の痛みなどを訴える人が相次ぎ、厚生労働省は、わずか2か月で接種を積極的に勧める取り組みを中断しました。当時は、接種後に見られた様々な症状について、連日、センセーショナルに報じられていました。 その後、HPVワクチンとこうした症状との因果関係を調べた研究が行われ、HPVワクチンを接種していなくても、副反応と思われた症状は同じくらいの割合で出ることがわかりました。安全性が確認されたとして厚労省は22年4月、HPVワクチンの接種を積極的に進めることを再開しました。 しかし、それから2年たった今でも、接種率は十分には回復していません。過去の報道のイメージが残っていたり、インターネット上でワクチンに対して否定的な見解が示されたりしていて、不安や疑問を感じるのは当然だと思います。
親子関係を悪化させないために
ヒトパピローマウイルスは、主に性交渉により感染します。そのため、ワクチン接種を検討する際に、性交渉をすでに経験したかどうかを尋ねなければいけないと思っている親御さんは少なくないようです。 「娘に確認できず、ワクチンを接種できないままでいる」「娘に性交渉の有無について問いただしたところ、親子関係が悪くなった」 日頃、診察室でHPVワクチンの話題が出ると、こんな経験談をよく耳にします。思春期を迎えたお子さんに性交渉の話を切り出すことは、かなり難しいですよね。 でも、大丈夫です。HPVワクチンを接種するにあたって、お子さんに性交渉の経験について確認する必要はありません。 HPVワクチンは、新たなウイルス感染を防ぐため、確かに、初めて性交渉をする前に接種しておくと、ワクチンの有効性は最大限に発揮されます。定期接種の対象が小学6年生から高校1年生相当となっているのもそのためです。 しかし、繰り返しになりますが、ワクチン接種を検討する際、お子さんに性交渉の経験について確認する必要はありません。仮に、すでに経験されていたとしても、ワクチンの有効性は十分にあります。