日本の空は“電線病” 無電柱化は「直接埋設」と「技術革新」でコスト減できる 小池議員と松原教授
電線の地中化など道路上の電柱をなくす「無電柱化」に向けた動きがある。自民党の無電柱化小委員会は、新規の電柱や電線の設置を原則禁じる無電柱化推進法案をまとめ、今国会提出を目指す。そうした動きを民間の立場から支える無電柱化民間プロジェクト実行委員会も7月に発足した。無電柱化は景観の向上や災害対策が目的だが、一方で、建設に膨大なコストやがかかる点や災害時の復旧しにくさを指摘する声もある。 なぜ電柱をなくす必要があるのか。多額の費用をかけてまで実行する意義はあるのか。自民党小委の小池百合子委員長と、同民間プロジェクト実行委理事の松原隆一郎・東京大学大学院教授に聞いた。
毎年7万本ずつ増える電柱
日本には現在、全国に約3552万本の電柱が立っている。これはだいたい「日本にある桜の木の数と同じ」(小池議員)だという。毎年7万本ずつ増えているのが現状だ。 自民党小委がまとめた法案では、電柱や電線の新設を原則禁止して抑制し、道路上の電柱や電線を撤去することなどを推進する。国や地方公共団体、関係事業者、国民の責務も記している。小池議員は「これまでと同じように電柱は立てるものだ、町のあちこちにあるものだ、というのをまず止めよう」と法案の趣旨を語る。 電線の地中化は、欧米の主要都市では戦前から取り組まれてきた。英ロンドンや仏パリでは無電柱化率が100%、独ベルリンも99%で地中化が標準となっている。アジアの国々でも進んでおり、韓国ソウルは46%、中国・北京は34%だ。一方、日本では東京23区が7%、大阪市が5%、京都市が2%(いずれも道路延長ベース)と極めて低い数字になっている。 日本で電柱が増え続ける理由について、同民間プロジェクト実行委は、経済重視で防災や景観は後回しにされてきた歴史があると指摘する。松原教授は「法案が成立したら、できれば新設の電柱はなしにしたい。一度に減らすのが無理なら、例えば東京五輪で観光客が来そうなところを集中的にやって、さらには生活道を進めていって、(東京の無電柱化率)7%の比率を高めていきたい」と期待する。