日本の空は“電線病” 無電柱化は「直接埋設」と「技術革新」でコスト減できる 小池議員と松原教授
なぜ無電柱化が必要か
無電柱化は少し前までは地中化と呼ばれていた。ただ実際は地中化だけでなく、例えば商店街の軒下を通すなど、さまざまなやり方がある。こうした無電柱化には「景観」「防災」「安全」の3つのメリットがあるという。 松原教授は、日本の空は“電線病”だと形容する。おびただしい数の電線がはりめぐらされ、それが日本の「景観」を損ねている。例えば、世界遺産に登録された富岡製糸場正門前にも電柱が立ち、三保の松原から望む富士山も電線で絶景がカットされてしまう。電線なしに富士山が見られない場所が多いのが現状だと小池議員は語る。前文化庁長官で富士山の世界遺産登録に尽力した近藤誠一氏も「電柱はネックだった」と明かしたという。 「防災」面での電柱の弊害は、災害時の倒壊による「二次災害」が挙げられる。1995年の阪神大震災では、神戸市長田区などの住宅密集地で倒れた電柱によって道路がふさがれ、消防車や救急車が現場に立ち入れず、救助に遅れが出た。電力用の電柱は、阪神大震災で約4500基が倒壊。東日本大震災でも津波などによって約2万8000基が倒れた。 無電柱化によって、電柱によるこうした弊害を解消できるとしている。
災害時に復旧できない?
しかし、無電柱化のデメリットを指摘する声もある。 例えば、電線を地中化すると「災害時に復旧できない」「断線してもどこが切れたか分からない」というものだ。しかし「それは逆」だと松原教授は言う。「もともと地中の方が災害に強いと分かっている。もともとそういうことが起きないのが地中化」。小池議員も「ガス管や水道管も地中を走っている。それと同じこと」と反論する。 倒れやすいものの、電柱の方が災害時に復旧しやすいのでは、との見方もある。それに対して松原教授は「もともと電柱がなければ倒れることもない。1回だけ見れば立てた方が早いとなるのかもしれないが、日本は地震や台風で10回も20回も倒れる可能性がある。それなら1回だけ埋めてしまえば、(無電柱化の方が)よっぽど早いということになるのではないか」と話した。