現実化する「2024年問題」…物流対策は万全か
荷主・バローHD 積み降ろし場所、5分単位で予約
中部地区を中心にスーパーマーケットやホームセンターなどを展開するバローHDは、メーカーや卸から荷物を受け、仕分け直して店舗に配送する物流センターの改革を19年に本格化した。 まず19年3月から5月にかけて愛知県一宮市、同豊田市、岐阜県可児市の大規模な物流センターに、トラックの荷物積み降ろし場所(バース)に予約システムを導入した。以前は先着順で、朝8時の受け入れ開始を前日夜から待つドライバーもいた。平均待機時間は約90分。年間1000万円以上の損失と同社は試算した。 新システムでは荷降ろしの開始時刻や所要時間を5分単位で予約する。利用率は90%以上で平均待機時間は30分以内になった。現在は先着順のままの予約方法の最適化、到着時間が読めない混載便(特積み)専用バース、発注と予約のシステム連動も検討している。 同年に全物流センターで店舗発注から納品までのリードタイム延長にも踏み切った。午前中に来た発注分の納品を、従来の当日夜から翌々日に変更。需要が予測不能のため手配していた予備の食品やトラックを不要にした。店舗や営業担当の反発はあったが、「問題になる欠品はない。時間はかかったが理解は得られた」と上口隆一物流部長は話す。 業界慣習を乗り越え、食品を賞味期間の3分の1以内で納品するルールも2分の1に改めた。食品ロス削減のため大手スーパーやコンビニエンスストアで先行したが、「当社は物流(効率化)のため始めた」と上口部長。実際、返品用の物流は無くなった。 今後の課題は共同配送だ。「トラックの空き時間帯は他社も同じ。情報開示もしにくい」と難しさを認めつつ、試みを一部地域で始めている。また物流子会社を通じ、物流センター向けに商品を仕分けして出荷する「フロントセンター」も稼働した。「物流改革は新たなフェーズに入った」と上口部長。さらなる効率化に策を練る。
資材・機器メーカー 2段積み・段差解消で荷役効率化
物流会社や荷主の流通事業者などは2024年問題に関し大枠の対策を終えているが、荷物の積み下ろし(荷役)の効率化はまだ大きな課題として残る。例えば段ボールのじか積みではトラックから荷物を下ろすだけで運転手を2―3時間拘束し負荷も高い。荷役を効率化する物流関連の資材や機器のサプライヤーは販促活動を強化している。 物流パレット大手の岐阜プラスチック工業(岐阜市)は、メーカーから物流センターへの製品納入に物流パレットの採用を促す。フォークリフトを利用し積み下ろし時間を30分程度と短縮できる。1100ミリメートル角×高さ120ミリメートルで重量が6・7キログラムと従来品より1キログラム軽い軽量樹脂パレットも発売した。 物流パレットに壁やふたを後付けして物流を効率化する大型箱「スリーブボックス」の販売も好調だ。パレットのみの使用時と異なり2段積みができトラックの積載効率を改善できる。荷物を樹脂フィルムで巻くなどの固定作業も不要で梱包資材の廃棄もなくせる。「1月以降の受注は前年同月の2倍」と営業担当者。一回り小型の船舶・鉄道仕様も発売し、モーダルシフトの需要にも対応する。 テーブルリフトやコンベヤーといったマテハン機器を手がけるメイキコウ(愛知県豊明市)。2024年問題では「トラックヤード(荷物の積み替え場)の自動化や時間短縮が絶対に必要になる」(保賀誠一郎社長)との見通しのもと、5年ほど前からヤード周辺の自動化・省力化の機器の販売を本格化した。 その一つがシザーリフト「段差らくーだ」。倉庫の搬出入口やトラックの荷台の高さに合わせて油圧でテーブルを上げる。荷物を載せた台車をテーブルに乗せたら地面に下ろす。昇降はスイッチ操作ででき、段差で生じる力作業を軽減する。 段差の解消にはスロープを付ける方法もある。だが、台車を下り坂で転がすのは危険で、「(段差らくーだの)引き合いがすごく多い」(同)という。 同社はシザーリフトだけでなく、コンベヤーなどの各種物流機器を統合し、ヤード内の搬送作業全般を省力化するシステムを組むソリューション営業を展開中。膨らむマテハン機器需要の取り込みを図っている。
日刊工業新聞