「年収の壁」引き上げで手取り減るケース多発の訳 パートは年収増で手当て減や社会保険加入が負担に
手当の金額は企業によって異なりますが、年収の壁の引き上げによってパートやアルバイトをしている人が収入を増やすと、扶養者が受け取れる手当が減り、世帯収入が減ってしまう可能性があります。 今回の税控除の見直しはパートやアルバイトで働く人のみならず、給与収入のある人全体を対象に控除額を引き上げるものです。であれば、手当が減るリスクをとって配偶者や子どもの収入をわざわざ上げなくても、扶養している世帯主などが減税を受けられれば十分と判断する家庭もあるかもしれません。
また、子どもが16歳以上30歳未満の場合には、その年収が103万円以下であれば親の所得税で「扶養控除」(38万円)を受けられます。大学生などで19歳以上23歳未満であれば「特定扶養控除」として、控除額は63万円になります。 子どもの年収が103万円を超えてしまうと税法上の扶養から抜けてこれらの控除を受けられなくなってしまうため、親の税負担が増えないように、子どものアルバイト収入を抑える家庭もあります。
特に親の所得が高い場合には所得税率が高く、控除の有無が税額に大きく影響するため、子どもの手取り額が増えても親の手取り額が減ってしまうことも考えられます。(なお、学生の子ども本人には「給与所得控除」と「勤労学生控除」により、アルバイトの年収が130万円までは所得税がかかりません) ■106万円の壁を超えれば社会保険加入で手取り減 扶養に入っている人の年収が高くなる際に、とりわけ注意したいのが社会保険です。勤務先の規模や労働時間など所定の要件を満たす場合には、年収106万円相当を超えると社会保険料の負担も生じます。これが、「年収106万円の壁」です。
年収106万円に相当するケース(毎月の所定内賃金が8.8万円)で社会保険に加入した場合、1カ月当たりの保険料の負担額は約1万2500円(※令和6年度。40歳以上は介護保険料と合わせて約1万3100円)になります。 年間で約15万円が給与から天引きされることになるため、103万円の壁の見直しによる本人の所得税の軽減効果を相殺してしまうか、むしろ手取り収入が減ってしまうケースが多いと考えられます。 年収106万円の壁によって社会保険の加入対象となるのは、現在のところは従業員数51人以上の企業で働き、かつ労働時間週20時間以上、雇用見込みが2カ月超の場合です。