韓国・尹大統領、今後どうなる? 罷免の是非3月ごろまでに結論か、罷免なら大統領選の行方は
45年ぶりの戒厳令と弾劾訴追案可決で混迷を極める韓国。今後どのような展開が予想されるのか。AERA 2025年1月13日号より。 【写真】非常戒厳(戒厳令)が出された日の韓国国会前はこちら * * * 果たして、韓国はこれからどこに向かうのか。焦点は、尹錫悦氏に対する内乱罪の捜査の行方と、尹氏の大統領罷免の是非を決める憲法裁判所の判断、罷免された場合の大統領選の行方だ。 尹氏は12月12日の談話で、戒厳令は大統領に認められた統治行為であり、司法判断の対象にはならないと主張している。だが、この主張は一種の独裁の主張で三権分立や民主主義を否定する発言だとも受け取れる。すでに司法当局は尹氏を内乱罪の首謀者とみている。内乱罪の首謀者に対する刑罰は、死刑あるいは無期懲役、無期禁錮しかない。内乱罪は大統領在任中でも訴追できるため、今後、尹氏に対する捜査や裁判が粛々と進められることになるだろう。韓国の裁判所は、尹氏に対する拘束令状を発出したが、大統領警護処による抵抗で期限の6日までの拘束は実現しなかった。当面、この状態が続きそうだが、尹氏が罷免された場合は、内乱罪の疑いで逮捕・拘束される可能性が高い。妻、金建希氏に対する与党「国民の力」の公認候補選びへの介入疑惑などの捜査も進むだろう。 一方、憲法裁判所は12月14日の弾劾決議から180日以内に、尹氏の罷免の是非を決めることになる。過去の弾劾決議では、盧武鉉大統領の際は決議後63日、朴槿恵大統領の場合は同91日で憲法裁の判断が出た。今回も2025年3月ごろまでには結論が出そうだ。 ■罷免の可能性高い 尹氏が国会に戒厳軍を投入した行為自体、憲法が定める戒厳令の国会解除決議を妨害する行為だと言えるほか、弾劾を望んだ世論が7割以上だったことから、罷免が決まる可能性が高い。その場合、憲法裁の判断から60日以内に次の大統領選が行われる。 野党「共に民主党」は李在明代表が圧倒的に有利な情勢だが、李氏は遅くとも2025年5月までに判決が確定する公職選挙法違反事件で有罪が確定すれば被選挙人資格を失う「司法リスク」を抱える。与党「国民の力」は弾劾決議を巡る対応が割れたこともあり、候補を一本化できるかどうかもわからない。 2025年前半の韓国は政治の季節になる。ユーチューブやSNS全盛の時代、韓国社会の分断と両極化がさらに進みそうだ。(朝日新聞記者、広島大学客員教授・牧野愛博) ※AERA 2025年1月13日号より抜粋
牧野愛博