農的な暮らし(3完)自分の手で収穫した米を食べる「一汁三菜」の幸せ
まあ、特に現代の日本人には「情報を食べる」という側面が強くあり、今回も、田植えの時に見た緑の田園風景や黄金色の稲刈り体験などの美しい記憶が、何よりもの味付けになったのだろうと思う。無農薬云々以前に、「自分たちでつくったものはおいしい」というのは、決して的外れな言葉ではないと思う。そして、僕はその事実を肯定的に受け入れる。
主菜は今期の初釣果のヤマメとイワナを1匹ずつ塩焼きに。プラスαで釣れた2匹は燻製にした。マイナス15度になる冬を小さな滝の裏で越した早春の魚たちだ。まだ竿を伝わる感触が残っているうちに食べたから、「命をいただく」という厳かな実感が、これまた最高の味付けになったのは間違いない。都会を離れると、だんだんとこういう体験込みの“味付け”が好みになって来る。実はもともとジャンクフードもウェルカムな僕でさえ、それは断言せざるを得ないのだ。