化粧品受託製造企業 製造コスト増に苦慮も、上期増収5割
本紙編集部が化粧品受託企業200社を対象に実施した取材・アンケート調査の結果(有効回答126社)、今年上期(1~6月)に増収を達成した企業は5割となった。コロナ収束に伴い、化粧品販売市場が回復基調に向かう中、受託市場でも受注数量の増加、売上高の回復が見られる。一方で、原料・資材、エネルギーコスト、人件費の高騰は依然として継続、利益が圧迫される状況からは脱していない。受託企業の身売りやM&A、倒産などのニュースも聞かれる中、今後は受託企業間での業績の格差が、より鮮明化する可能性も。こうした中、受託製造市場では研究開発・企画提案力の強化に注力することで、ODM企業へと進化を図る動きも加速している。 ■受注数量・売上高は増加も、利益圧迫の状況続く 今年上期の経営状況について「良かった」と回答した受託企業は、昨年調査より8.6ポイント減の30.0%、「悪かった」との回答も同4.5ポイント減の12.2%、「どちらとも言えない」との回答が同13ポイント増の57.7%と大幅増加した。 今年上期の増収企業は、昨年調査より9.2ポイント減の51.4%。減収は同2.7ポイント減の23.9%、横ばいは同6.5ポイント増の24.8%となった。増収企業からは、「既存顧客の売上回復」「新規大口案件の獲得」「輸出案件の増加」「メイクアップ関連のV字回復」などの明るいコメントが見られた。 一方で今回、受託企業の多くからは、「増収減益」との声が聞かれた。背景には、製造に関わるコストの高騰が挙げられる。多くの受託企業は、昨年にはブランドオーナー側との値上げ交渉を終えており、さらにコロナ収束に伴う既存顧客の販売回復、新規顧客からの受注獲得などを受け、受注数量や売上高は回復基調で推移している。ただ長引く円安下で、製造コストの上昇は依然続いており、加えて工場での慢性的な人手不足から、パートの時給アップなど人件費も嵩んでいることから、利益を圧迫される企業も少なくない。 ■業績の二極化傾向 輸出は中国鈍化、他国は順調 業界の景気動向を示す設備投資については、今年上期の実施企業は45.1%。昨年調査より2.7ポイント減少した。一方で、「新工場建設」を行った企業は6社と、企業間で業績の二極化が見られる。海外輸出向け製品や海外企業からの受注は、コロナ収束で、「実績あり」との回答が、昨年調査より7.3ポイント増の86.6%に。ただ輸出先1位の中国案件は、度重なるレギュレーション改正等で動きが鈍化。中国国内の景気低迷で消費減少も見られるようだ。 こうした中、今年上期の海外向け受注が前年より増えた企業は、昨年調査より8.9ポイント減の26.3%。増加企業からは、「ベトナムをはじめアセアン地域での輸出が伸長」「EUへの輸出が増加」などの声が聞かれ、中国以外の国への輸出は順調のようだ。 ■ヘアケア製品の人気継続 自然派と高機能の人気が二分 今年上期の人気受注アイテムは、ヘアケア(イン・アウトバス含む)がトップ。中・高価格帯のシャンプー・トリートメントを筆頭に、ヘアミストやヘアオイル、ヘアクリームなど、アウトバス製品の受注も好調を維持した。最近では、ヘアケア製品の細分化が進んでおり、ハネ毛やアホ毛のケアに特化したアイテム、頭皮の美容液などの回答も見られた。また、バーム剤形の需要が高まっているもようで、専用充填機を導入した企業も複数見られた。 一方、今年上期の人気受注素材は、昨年2位のナイアシンアミドがトップに。幹細胞内で情報伝達を担う「エクソソーム」も昨年の初登場から6位に伸長。今回の調査からは、自然派コスメと高機能コスメで、人気が二分する傾向が見られた。 ■下期も5強割が増収見込む ODM企業へ進化の動きが加速 今年下期の経営見通しについて「良くなる」との回答は、昨年調査より16ポイント減の30.9%。増収見込み企業も同19.1ポイント減の56.0%に。多くは「現状維持」と回答した。今年通期の市場展望を聞いた調査では、多くの企業が市場は上向きになると回答。一方で、製造に関わるコストの高騰で、利益が圧迫される状態が続くとのコメントが多かった。今年上期には受託企業の倒産や身売り、M&Aなどが数件見られた。今後は企業間格差が、より鮮明化する可能性もある。 こうした中、研究開発や企画提案力に注力し、自社独自の原料や処方開発、マーケティングやブランディングのサポートなど、製造+αの強化で、ODM企業へと進化を図る動きも加速している。