人民元とユーロの下げ加速、アジアと欧州の新興国通貨見通し悪化
(ブルームバーグ): 中国人民元とユーロの下落がここ数カ月加速しており、アジアや欧州の新興国通貨の見通しを悪化させている。
人民元とユーロが、規模の小さい通貨の「アンカー(いかり)」としての役割を果たしていることが背景だ。市場の状況に応じて、マイナーな通貨を支えることもあれば、押し下げることある。相関関係の調査によると、ここ数カ月でそのアンカーとしての役割はさらに強まっている。
ドル高と米関税引き上げの脅威により、人民元とユーロは9月末以後に値下がり。中国の景気刺激策に対する期待が後退したことで人民元が売られ、欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測が高まったことでユーロも下げた。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの新興国市場担当エコノミスト兼外国為替ストラテジスト、ブレンダン・マッケナ氏(ニューヨーク在勤)は「中国が為替面あるいは経済面で圧力を受けると、その影響が他のアジア地域に波及する」一方、「ユーロが圧迫されている場合、東欧通貨の一部が弱含む」と指摘した。
人民元と、アジア新興国通貨のバスケットを追跡するブルームバーグ・アジア・ドル指数の相関係数(30日間)は今月0.95に上昇し、5年ぶりの高水準となった。
ユーロと中・東欧通貨のブルームバーグ指数との同等の相関係数は9月末時点の0.2前後から0.6に上昇。相関係数の1は完全な正の相関関係を意味する。
ゴールドマン・サックス・グループは、ドルが「より長く強い」状態が続く可能性が高く、ユーロや人民元、ひいてはアジアや欧州の新興国の通貨にさらなる圧力がかかると想定。
ロンドンでゴールドマンのグローバル外為・金利責任者を務めるカマクシャ・トリベディ氏は、「ユーロ圏は貿易の不確実性により特に悪影響を受けており、これが中・東欧の経済と通貨にとって厳しい環境をもたらしている」と述べ、「予想される人民元下落の波及効果を低金利のアジア通貨が避けるのは難しい」との見方を示した。