新紙幣発行間近!: 1000円札になる葛飾北斎「神奈川沖浪裏」が世界を魅了する理由は…
波の表現は、北斎が若い頃に所属した「琳派」の得意技。日本伝統の大和絵をきらびやかに発展させた絵画・工芸の流派で、自然をテーマにした作品が多かった。また、中国の花鳥画からは写実表現を習得しており、「浪裏」のしぶきを上げる波頭のディテールに生かされている。
88年の生涯を絵にささげ、描き散らかしては引っ越しを93回繰り返し、残した作品は3万点超。そんな自称「画狂」だからこそ、「和洋中さまざまな技法を吸収して、デフォルメと写実の均衡が絶妙」な無二の傑作を生みだせたのだろう。
魅力が色あせない「浪裏」は、同時代から現代までオマージュやパロディー、図柄を借りた製品等は数知れず。紙くず同然に扱われることもあった時代から150年余りを経て、億の値が付き、さらには紙幣に印刷されて全国民の目に触れるとは。あの世の北斎は、自作が波のように変化しながら、海を越えて広がり続けていることを喜んでいるだろう。
※掲載図の★は「北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―」(前期:6月18日~7月21日、後期:7月23日~8月25日)に出品 詳細は すみだ北斎美術館 公式サイト を参照
【Profile】
藤原 智幸(ニッポンドットコム) 出版社勤務を経て、現在はニッポンドットコム編集部エディター。旅や日本文化を中心に記事を制作している。