日本、シンガポール、香港に学ぶ暗号資産規制──「フレンドリー」は「イージー」を意味しない
厳格なライセンス制を整備:香港
香港が暗号資産ハブとして再浮上していることも話題になっている。香港証券先物委員会(SFC)は6月、暗号資産取引所のライセンス申請の受付を開始した。香港は見たところ、シンガポールよりも暗号資産取引にフレンドリーなようだ。例えば、香港の規制当局は銀行に対し、暗号資産取引所をより多く顧客として取り込むよう働きかけた。 しかし、このような友好的な姿勢には多くの条件が伴う。香港にはまだ認可された取引所が2つしかなく、スポット(現物)取引が可能な暗号資産は限られている。取引所の資産の98%はコールドウォレットで保有しなければならない。 また、取引所は香港内にカストディのための法人を設立しなければならない。承認に弁護士、コンサルタント、保険業者からなるチームが必要となるため、香港で取引所を運営することは簡単でも安価でもない。新しいライセンスを取得するには、1200万ドルから2000万ドル(約17億円から28億円、1ドル142円換算)の費用がかかるという。
厳しい規制で投資家保護:日本
そして日本だ。与党の自民党は日本をWeb3のメッカにする意向を明確にしている。「多くの国々が逆風に身をすくめる中で、暗号資産業界の苦難を幾度も目の当たりにしてきたわが国だからこそ果たせる役割がある」と、自民党web3プロジェクトチーム(web3PT)が2022年に発表した提言には記されている。 日本は逆風や寒風に慣れている。2018年にコインチェック(Coincheck)がハッキングされた後、日本の規制当局は暗号資産に対して非常に厳しくなり、日本の暗号資産業界は危機に瀕していると危惧する声もあった。 しかし、2022年11月にFTXが破綻した際、日本の規制アプローチは大きな勝利につながった。日本は暗号資産取引所に対して、取引所と顧客の資産を分別管理するよう求めており、FTXジャパンのユーザーは実際に資金を取り戻すことができた。 日本はまた、ステーブルコイン規制が施行された最初の主要国のひとつだが、非常に高いハードルを設定している。 日本でステーブルコインを発行できるのは、銀行、信託会社、資金移動業者のみ。信託の仕組みが一般的な方法になりそうだが、この場合、ステーブルコインの裏付けとなる資産の100%を日本国内の信託で保管する必要があり、運用は国内の銀行口座でしか認められていない。 日本の低金利を考えると、円ベースのステーブルコインが利益をあげることは非常に難しくなりそうだ。しかし結局のところ、日本が暗号資産起業家の目的地となるための最大の障害は高い税金かもしれない。