社会人になり初任給を受け取りましたが、思ったよりも手取りが少なく奨学金の返還が心配です。家計管理のポイントを教えてください。
田中(仮名)さんは今春、大学を卒業し社会人になりました。思っていたより手取り額が少なく10月から始まる奨学金の返還が心配になり、FPに家計管理についてアドバイスを求めました。
収入≠手取り額、手取り額の範囲内で生活する
大卒の初任給は平均約22万円(2023年度)です。ここから、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料)と税金(所得税・住民税)が差し引かれます。これが手取り額です。 実際に通帳に振り込まれる金額です。何がいくら引かれているかは会社が発行する給与明細書でわかります。手取り額は総支給額の80%程度です。家計管理を考える上では実際に使える手取り額で考えることが大切です。 田中さんの手取り額は約18万円です。田中さんは約18万円の範囲内で、住居費・食費・携帯代、衣服費、交際費や奨学金の返還なども支出を賄う必要があります。 なお、新卒の新入社員の方は、1年目は住民税の納付はありません。なぜなら、住民税の金額は前年の所得をもとに計算するからです。したがって、1年目と給与が同じでも2年目は住民税の分だけ手取りが減ってしまいます。
4月から奨学金返還原資の「先取り貯金」をしよう
田中さんは、大学4年間、第二種奨学金を月額7万円、総額336万円借りました。卒業時の利率は0.940%(利率固定方式)です。申込時は利率見直し方式を選択しましたが、卒業時に今後金利が上昇しそうだと判断し、利率固定方式に変更しました。 利息を合わせた返還総額は368万5675円となり、10月から19年間、毎月1万6164円返還することになります。 令和4年3月に貸与が終了した奨学生(大学(学部))の、1人当りの平均貸与総額および平均返還年数は、無利子の第一種奨学金が216万円(14年)、有利子の第二種奨学金が337万円(17年)となっていますので、田中さんの借入額は平均に近い金額といえます。 田中さんの手取り額は約18万円で、ギリギリの生活です。毎月1万6164円の返還は決して楽ではありません。しかし、奨学金の返還が延滞すると年3%の延滞金が課されます。3ヶ月延滞すると個人信用情報機関に個人情報が登録され、クレジットカードが発行されなかったり、利用が止められたりすることがあります。 また、自動車ローンおよび住宅ローン等の各種ローンが組めなくなる場合があります。さらに、延滞が長期間続くと法的措置をとられます。したがって、何としても延滞は避けなくてはなりません。 田中さんは、毎月約18万円の予算で生活していると、10月から毎月1万6164円の出費が増えるのは大変厳しい状況になります。 そこで、4月から返還が始まったと仮定して、返還額を「先取り貯金」して、残りで生活費を捻出するように家計管理することが大切です。4月から9月まで積み立てれば、9万6984円の貯金ができ余裕ができます。ボーナスの一部は、繰上げ返還に使うと良いでしょう。