「介護に疲れ限界だった」89歳父親に暴行容疑の59歳男に懲役2年を求刑 母親の在宅介護巡り口論に【福井】
自宅で父親に暴行したとして、傷害の罪に問われた59歳の男の裁判が17日、福井地裁で行われた。父親は暴行の翌日に死亡したが、暴行との因果関係は認められなかった。男は起訴内容を認め、「両親の介護で限界だった」と話した。
父親は暴行の翌日に死亡
傷害の罪に問われたのは、福井県勝山市の無職・前川健司被告(59)。 起訴状によると、前川被告は2024年7月、同居する父親(当時89)の顔を殴ったり腰を蹴ったりするなどして、大けがを負わせたとされている。父親は事件翌日に近所の人が発見し、病院に搬送されたが、脳ヘルニアで亡くなった。暴行との因果関係は認められなかった。
母親の介護をめぐり口論に
前川被告は起訴内容を認めたうえで「精一杯、母親の介護をしていたが、父親から自分の行動や金銭面について厳しく指摘され、イライラして限界だった」と話した。 検察によると、前川被告は認知症の母親の介護のため2022年から両親と同居し、両親の介護を担っていた。母親は認知症で、がんを患い2024年6月から入院していて、事件当時は父親と2人暮らしだった。父親からは、自宅で母親を介護するよう求められていたという。 裁判の中で前川被告は、警備員の仕事が不規則で、在宅介護をするにも金銭面の負担が大きいとして「病院で診てもらう方が良い」と主張したのに対し、父親は「もっと介護しろ」と言われ口論になったと説明。
「これ以上は仕事を辞めなければ…」
「睡眠時間を削っていて、仕事中に寝てしまうことがたまにあった。夜勤を減らしてもらうよう会社にお願いしたが、難しかった」と自身の状況を説明した。 口論の末、父親に「殴るよ」と言うと「殴れるようなら殴ってみい」と言われ、泣きながら殴ったという前川被告。その後、荷物をまとめて家を後にし、翌日、近所の人から救急車で搬送されたとの連絡が入った。 前川被告は「こんなに介護しているのに、もっと認めて欲しい、分かって欲しいという気持ちがあった。これ以上なら仕事も辞めなくてはならず、『この分からずや』と思って泣きながら殴った」と当時の心境を語った。
弁護側は執行猶予付きの判決を求める
今後について聞かれると「仕事ができるものなら、介護で過ちを犯した、苦労した人のお手伝いがしたい」と声を震わせながら語った。 検察は、動機に酌量の余地はなく結果も重大であるとして、懲役2年を求刑。一方、弁護側は動機や経緯に同情の余地があるとして、執行猶予付きの判決を求めた。 判決は2025年1月10日に言い渡される。
福井テレビ