地区が総額1億円支援 志賀・富来領家町、地元離れ防げ 住まい再建1件100万円
●土地賃料を財源に 能登半島地震で甚大な被害を受けた志賀町富来領家町区は、住まいの再建に最大100万円を支給する独自の支援制度を設けた。地震後、能登各地でコミュニティーの維持が大きな課題となる中、行政顔負けの手厚い手当で住民の地元離れを防ぐ。長年にわたる区有地の賃貸で得た積立金を財源に破格の1億円を事業費に計上し、7月から申請を受け付ける。 支援金は罹災(りさい)証明を受けた世帯を対象とする。富来領家町地内で自宅を建て替える場合は被害区分に関わらず100万円、補修・修繕する場合は半壊以上に50万円、準半壊・一部損壊に30万円を配る。 家の再建には国の被災者生活再建支援金があり、被害の判定に応じて最大300万円が支給される。志賀町も5月に義援金の1次配分を始め、半壊~全壊に4万~12万円、国が支援金の対象外としている準半壊・一部損壊には3万円を配った。ただ、町民からは「もらえるだけありがたいが、全然足りない」との声が多い。 昨年末時点で約330世帯680人が暮らしていた富来領家町でも多数の建物が倒壊し、今も放置された家が目立つ。山本政人区長(67)によると、ほぼ全ての家がどこかしら損壊したとみられ、5月末までに約4分の1の住民が区外に避難したり転出したりしたという。 「このままでは住民が出て行く一方だ」。区の役員らは総会などで対策の協議を重ね、独自支援金を出すことにした。 地元では旧富来町時代の昭和40年代から国道249号周辺の開発が進み、区は町や民間企業と区有地の定期賃貸契約を結んで土地を提供してきた。それら賃料の積み立てで入学祝い品の贈呈など多くの事業を実施してきたが、億単位の予算を組むのは今回が初めて。 志賀町によると、1億円規模で予算を付けられる区・町会は全国的にも少ない。富来領家町区は住宅再建支援金のほかに、区に加入する全世帯を対象に1世帯当たり5万円の見舞金を支給し、今年度の区費1万5千円を全額免除した。今後は転入してきた世帯にも支援金を支給する計画で、山本区長は「住民が一人でも多く残り、戻ってこられるよう、最大限の支援を行い、復興を成し遂げたい」と話した。 ★富来領家町 旧富来町の中心部。富来行政センターなどの公共施設のほか、町を代表する観光名所「世界一長いベンチ」、地域最大のスーパー「増穂浦ショッピングモール・アスク」などが立地する。能登半島地震では最大震度7を記録し、多くの家屋が甚大な被害を受けた。5月末時点で322世帯658人が暮らす。