【報知映画賞】草笛光子「私は何にもしてないわよ」特別賞受賞 91歳、周囲に感謝
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。「九十歳。何がめでたい」(前田哲監督)の草笛光子(91)、「明日を綴る写真館」(秋山純監督)の平泉成(80)が特別賞に選出された。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! * * * 90歳にして映画単独初主演の草笛は「九十歳―」で実年齢と同じ現役作家をエネルギッシュでチャーミングに演じ、興行収入10・3億円のヒットに導いた。長年にわたる映画界への貢献も踏まえて特別賞に選ばれた。 「大変ありがたいけれど、長く生きて長く女優をやっているだけで『私は何にもしてないわよ』と言いたくなります」と謙遜。その上で「名監督、名俳優の映画にたくさん出させていただいて、お客様に楽しんでもらえる作品を残すことができているのは幸せ。報知映画賞特別賞、胸を張って頂戴します」と周囲に感謝した。 1953年の「純潔革命」で銀幕デビュー以来、70年で約130本の映画に出演。中でも成瀬巳喜男監督、市川崑監督の作品に多く出演した。「成瀬監督は女優をきれいに撮ることに力を注いでくださった。そして市川監督の横溝正史シリーズには全作品出演しましたが、一切妥協しない映画づくりを目の当たりにして、妥協しない役づくりを楽しめるようになりました」と振り返った。 マネジャーとして支えてくれた母の「卑怯(ひきょう)な仕打ちや理不尽な目にあっても、毅然(きぜん)としていましょう。きれいに生きましょうね」という言葉を胸に刻む。10月には91歳の誕生日を迎え、文化功労者にも選出された。今後の抱負は「もうありません(笑い)。自由にそのまんまで生きること。“そのまんま光子”でいることです」と語った。(有野 博幸) ◆九十歳。何がめでたい 断筆宣言をした作家の佐藤愛子(草笛)が昭和かたぎの中年編集者・吉川(唐沢寿明)の説得により、連載エッセーをスタート。歯に衣(きぬ)着せぬ鋭い言葉で閉塞(へいそく)感の漂う日本の世相をバッサリ斬り、空前のブームを巻き起こす。 ◆草笛 光子(くさぶえ・みつこ)1933年10月22日、神奈川県生まれ。91歳。50年、松竹歌劇団に入団。53年に「純潔革命」で映画デビュー。ミュージカル「ラ・マンチャの男」「シカゴ」の日本初演に出演。主な出演作は映画「犬神家の一族」(76年)、「沈まぬ太陽」(2009年)、「老後の資金がありません!」(21年)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22年)など。 ▼特別賞 選考経過 平泉は「明日を綴る写真館」、草笛は「九十歳。何がめでたい」での名演と、日本映画界への長年の貢献により選出。「『明日を綴る写真館』『九十歳。何がめでたい』、ともに俳優キャリアの総決算。日本映画の良心」(見城)、「(『九十歳―』で共演した)草笛さんは日本中の人たちに生きる力を与えた」(LiLiCo)。 ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
報知新聞社